カルガモ親子の横断に気を付けて! 川崎市中原区の「江川せせらぎ遊歩道」で生活するカルガモたちの“交通”安全を守るため、同区が全国的にも極めて異例な「カルガモ飛び出し注意」の道路標識を先月4日に設置。同区道路公園センター担当者は22日、「遊歩道に流れる川が中原街道のところだけ、分断してしまっているんです。カルガモが渡ってしまうこともある。標識があることで少しでも意識していただければ」と注意を促した。

きっかけは昨年5月、カルガモが交通事故にあったことだった。直後に市民から「何かできませんか?」との声があがり、区が動いた。「動物注意」の道路標識の絵柄には「標準」としてタヌキ、サル、シカ、ウサギがあるが、それ以外の動物については実情に合わせての製作が認められており「デザインに関しては、職員が考案して決まりました」。親ガモの後ろを子ガモ3匹が追うデザインで完成。「市民の方にも愛されていますし、我々も愛着があるカモたちですので、人間と動物が共存する環境を守っていかないと」と効果を願った。

同遊歩道は全長2400メートル。その中で、カルガモのカップルが何組もいる。今年はヒナの誕生が早く、地元住民によると、3月中旬と4月上旬に、2組の新たな家族が誕生したと言う。最初に生まれた子ガモたちは「えっ、もうこんなに大きくなっちゃったのお」と近所の30代女性が驚くほど成長。それでも母ガモの後ろをついて歩き、泳ぐ姿はかわいらしい。

コロナ禍での楽しみは孫とのカモ鑑賞だと言う70代女性は「癒やしの存在なので、去年、事故にあっちゃったと聞いて、悲しかった。出来れば大通りにはいかないで欲しいですね」と不安顔。60代の男性は「この前はヒナがカラスに襲われて連れて行かれちゃったのを見た。人間による盗難もあって、夜は警察が見回りしています」と憤る。

「カルガモ飛び出し注意」の標識は、中原街道の巌川(いわかわ)橋交差点付近の上下線に1カ所ずつ。カモ優先で。【鎌田直秀】

◆カルガモ 川や湖、池などの淡水で生活。小魚や昆虫、水草などを食す雑食性。体は雄が平均60センチ、雌が50センチだが、黒褐色の羽毛でくちばしの先が黄色いなどの外見はそっくり。繁殖期は4月から7月で、巣を草むらなどに作る。平均10個前後の卵を産み、雌が温める。雄は離れて生活し、約25日間でのふ化後も子育てはしない。ヒナは自力でエサをとり、約2カ月で成鳥に。ふ化後に親の後ろをついてまわり、行動を学習する習性があることから整列しているように見える。84年以降、東京・大手町の三井物産にあった人工池から皇居和田倉堀へ移動する“引っ越し”姿が人気となった。