自民党の安倍晋三元首相(67)が8日の白昼、銃撃され、亡くなった事件。街頭演説をしていた安倍元首相が男に銃撃された瞬間、現場は白煙に包まれた。

現場は奈良市の近鉄大和西大寺駅北口。駅前ロータリーから続く横断歩道の中央付近に立ち、駅に背を向ける形で参院選の応援演説をしていた時だった。

駅ロータリー方向から男が近づいた。グレーのシャツにベージュのズボン。黒縁メガネをかけ、マスクをしていたという。

目撃した50代男性はこう証言する。

「気がついた時には(安倍元首相の)背後に近づいていました。私の目線に入ってすぐ、道路の真ん中で銃を構えた。マイクを通した演説の声が大きかったので、男が何を叫んでいるかは聞こえなかった。平然とした顔で、ちゅうちょなく撃った」

銃声は2発。打ち上げ花火のように大きな音だったという。道路に隣接するビルの7階にいた女子高校生は、その音を聞いて窓の外を見た。

「司会をしていた方が震えた声で『誰か救急車を呼んで下さい』とマイクで叫んでいました。『早く心臓マッサージをして』という声も聞こえてきた。みんなが倒れた安倍さんを囲んで、心臓マッサージをしていた。大変なことが起きたということが分かりました」

黒のビニールテープのようなもので巻かれた銃で、長さは30~40センチあったという。居合わせた60代女性は涙目でこう明かした。

「普通の銃ではなかったです。通常よりも大きくて、戦争で見るバズーカ砲のようなもの。かなりの至近距離で、見る位置によっては3~5メートルくらいしか離れていなかったようにも見えました。背後からだったので、安倍さんから(犯人は)見えていなかった」

白煙とともに「炎のようなものが広がるのが見えた」と証言する人もいる。

倒れた同元首相は首から胸にかけて流血。白いシャツは血で赤く染まっていた。顔面蒼白(そうはく)で道路上に横たわり、関係者から心臓マッサージを受けた。現場は混乱状態となり「誰か医師か看護師はいませんか」と叫ぶ声が聞こえてきたという。

容疑者はすぐに取り押さえられ、ロータリー横のバス停付近で身柄を確保。銃は路上に置いたままで、60代男性は「しばらくは煙があがったまま。尋常ではない状況だった。撃った男は暴れる様子もなく、バス停の方に引きずられていった」と明かした。

事件発生から約5時間半が過ぎた午後5時すぎに規制が解除され、捜査員が撃たれた場所の血痕を洗い流し、金属探知機で生け垣などを捜索する姿があった。

上空にはヘリコプターが飛び、海外の通信社も含め大勢の報道陣が詰めかけていた。【益子浩一】