自民党の安倍晋三元首相(67)を銃撃し、殺人未遂容疑で逮捕された職業不詳の山上徹也容疑者(41)は、奈良県警の調べに対し、「安倍元首相に対して不満があり、殺そうと思って狙った」という趣旨の供述をしている。また、「特定の団体に恨みがあり、安倍元首相と団体がつながっていると思い込んで犯行に及んだ」とも話しているという。

政府関係者などによると、同容疑者は05年ごろまでの約3年間、海上自衛隊の任期制自衛官だったとみられ、広島県の呉基地に勤務していたとされる。海自には02年8月に入隊し、05年8月までの1回分の任期を務めた。長崎県の佐世保教育隊を経て広島県の呉基地で護衛艦まつゆきに乗船し、同県の第1術科学校を最後に海士長の階級で退官したとされる。

防衛省によると、任期制自衛官も入隊すると、小銃を分解して組み立て、再度使用できる状態まで戻す作業をして、銃の構造を理解する教育を受けるという。1年に1回は実弾射撃訓練もする。海自幹部は「短い間でも自衛隊に所属していれば、銃の仕組みは一般人より詳しいはずだ」と説明する。

現在は奈良市内のマンションに移住し、20年秋ごろからは大阪府内の人材派遣会社を通じて関西地方の製造業の会社に勤め始めた。今年5月には体調不良を理由に勤務先を退職。会社関係者は、仕事上のトラブルはなかったとし「口数は少ないが、攻撃的な感じにも見えない。政治的思想を感じたことはなく、事件と結びつかない」と戸惑いを隠せなかった。卒業した奈良県内の公立高校の卒業アルバムには、将来の自分について「わからん。」と記していた。高校3年で同級生だった女性(41)の話では、応援団に所属。人見知りの一面もあり「1人でいることが多かった」と振り返った。

県警による同容疑者宅の家宅捜索は8日夕方から行われ、深夜に及んだ。自宅からは手製とみられる銃数丁や、爆発物の可能性がある物も押収した。県警の捜査員に加えて、機動隊の爆発物処理班などが大きな盾や消火器などを手に準備。捜索を進めるにつれ、事態は深刻となった。同広報担当者から「爆発する可能性があるものが見つかったので運び出します。この場を離れてください」と報道陣に緊急要請。さらに数時間後には「危険な可能性がある。さっきとは違う」と警戒を強化。周辺道路を通行止めにし、マンション住民も避難させての、厳戒態勢をとった押収作業となった。

【関連記事まとめ】安倍晋三元首相67歳で死去 奈良で街頭演説中に背後から銃撃>>