衝撃的なテロから一夜明けた9日、18日間の選挙戦は最終日を迎え、各党は遊説を再開し、最後の訴えを行った。安倍晋三元首相と初当選同期の岸田文雄自民党総裁(64)は、東京・渋谷の自宅に無言の帰宅をした安倍晋三氏への弔問を終えた後、新潟市内で最後の遊説を行った。

左腕に喪章を巻いた岸田氏は冒頭、前日の事件に触れ、「民主主義の根幹である選挙の最中に暴力で言論が封殺される。こうしたことは絶対許してはならない。民主主義はこうした暴力に決して負けないということを示さなければならない」と訴え、約17分の演説を「この18日間、本当にいろんなことがありました。大きな悲しみもありました。絶対に忘れることができない選挙となりました」と話して締めくくった。

警察庁は8日、事件を受け、全国の都道府県警に警備の強化を指示した。岸田氏が午前中、遊説を行った山梨県富士吉田市では、山梨県警は金属探知機を使って聴衆のリュックやかばんをチェックした。最後の訴えの場となった新潟市の古町交差点は、市内一の繁華街で通行人が多いため、金属探知機は使われなかったが、制服警官が近くのビルの屋上を確認。演説中は道路上だけでなく、アーケードの屋根の上にも立ち、厳重警備した。

自民党総裁の最後の訴えは、亡くなった安倍氏が秋葉原で必ず最終演説を行っていたように都内で行うのが慣例だ。岸田氏も初陣となった昨年10月の総選挙は大井町駅前で締めくくっている。地方で行うのは初めてだ。

勝敗を左右する1人区に自ら入り、この選挙戦に懸ける意気込みを示すことが狙いだ。岸田氏が新潟に入るのは今月4日に続き2度目。終盤戦に2度は極めて異例だ。新潟は32ある1人区の中でも有数の激戦区で、立憲民主党を代表する闘士である森裕子氏(66)と自民党新人の小林一大氏(49)が激しく争っている。【中嶋文明】

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