自民党総裁の岸田文雄首相は8日、党本部で臨時役員会を行い、10日に予定している内閣改造と党役員人事を合わせて「総裁一任をお願いする」と申し入れ、了承された。安倍晋三元首相の「国葬」や、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と党所属の国会議員との関係が明るみとなる中で岸田氏は「社会的に問題が指摘されている団体との関係については十分注意しなければならない。当該団体との関係をそれぞれ点検し、適正に見直してもらいたい」と指示し、茂木敏充幹事長は個々の議員に「適正な見直しを求めるよう通達を出す」とした。

今回の人事刷新は旧統一教会を巡る問題による政権批判をかわし、関係清算の姿勢をアピールすることで政権運営を安定させるのが狙いだ。まず党内を固めるため、麻生派(51人)を率いる麻生太郎副総裁と、茂木派(54人)のトップ茂木氏を留任させる方針だ。

一方で、安倍氏に抜てきされた高市早苗政調会長は交代が有力視される。無派閥の高市氏は起用当初から最大派閥安倍派(97人)から反発を受け、NO・2の茂木氏との関係に溝もあり、党内融和を優先するとみられる。旧統一教会との問題について「何が問題なのか分からない」などと発言して反発を招いた福田達夫総務会長(安倍派)の続投させず、マイナスイメージの払しょくを図る方向だ。

閣僚人事では各派閥の利害を考慮し、松野博一官房長官(安倍派)、林芳正外相(岸田派)、鈴木俊一財務相(麻生派)も続投の方向で萩生田光一経済産業相(安倍派)は続投か、党要職での起用とされる。議員引退した金子原二郎農相と二之湯智国家公安委員長は民間閣僚として継続しているものの刷新が有力で、閣僚経験のあるベテラン議員は「サプライズも含めて大胆な人事の可能性がある」とする。

当初は9月上旬とみられていた内閣改造、党人事を一気に前倒しした岸田首相の早業人事が注目される。