藤井聡太王位(竜王・叡王・王将・棋聖=20)が6日、20代初タイトルを獲得した。豊島将之九段(32)の挑戦を受ける、将棋「お~いお茶杯第63期王位戦7番勝負第5局」が5日からの2日制で静岡県牧之原市「平田寺」で行われた。

対局は藤井が豊島を下し、対戦成績3勝1敗で防衛し、3連覇を果たした。5冠を堅持し、通算タイトル獲得10期と大台に乗せた。これは史上9人目となる。20歳1カ月での達成は史上最年少、初タイトルから2年1カ月での達成は最短記録。タイトル戦負けなしV10も前人未到の記録でもある。

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20代初のタイトル獲得が見えても、藤井はしっかり局面を読んでいた。最後は得意の終盤力で圧倒し、豊島を投了に追い込んだ。

シリーズ途中の8月上旬、豊島が新型コロナウイルスに感染し、予定されていた同月15、16日の第4局(佐賀県嬉野市)が延期された。第5局(8月24、25日、徳島市)が第4局、今回の牧之原市対局が第6局から第5局に繰り上げとなっても、しっかり準備の時間に充てた。

王位戦は3連覇。タイトル10期の大台に乗せた。タイトル獲得2ケタ棋士は、羽生善治九段の99期以下、全部で9人しかいない。タイトル戦10連勝での達成は誰もなしえていない。20歳1カ月はもちろん最年少。羽生善治九段が1994年(平6)2月に23歳4カ月で達成した記録を更新した。2020年(令2)7月の初タイトルからたった2年1カ月での達成も、中原誠十六世名人の4年0カ月の約半分のスピードだ。

7番勝負では、これで3勝した後に5戦負けなし。恐るべき勝負強さだ。しかも静岡対局は3連勝。昨年と7月の棋聖戦5番勝負第3局(沼津市)で勝ってタイトル初防衛。今年1月の王将戦7番勝負第1局(掛川市)では、当地6戦全勝を誇っていた渡辺明王将(当時)に初めて土をつけ、史上最年少5冠獲得への足がかりを築いた。今回は、特別協賛の「伊藤園」の工場と研究所を有するお茶どころで、王位3連覇を達成した。

今年も行われたサントリーオールスターのファン投票では西軍はもとより、全棋士トップとなる3万7672票を獲得した。東軍は1位の永瀬拓矢王座が1万5190票、2位羽生善治九段が1万2478票、3位の渡辺名人が1万1986票だから、この3人の合計得票数と大して変わらない票数を集めている。もはや、人気・実力ともに誰もが認める第一人者だ。

来月からは、広瀬章人8段の挑戦を受ける、竜王戦7番勝負の防衛戦が始まる。年内には王将戦の挑戦者も決まる。自身は、現在ベスト8まで初めて勝ち上がった棋王戦で、年内の挑戦権獲得も目指す。もちろん、名人戦挑戦者を目指すA級順位戦も組まれている。さらなる高みを目指す戦いはまだまだ続く。【赤塚辰浩】