飲酒を禁じるイスラム教が国教のバングラデシュで唯一の国産ビールが製造されている。その名は「ハンタービール」。政府が認可し、メインターゲットは日本人や中国人をはじめとする外国人。輸出はしておらず、国内の限られた場所でのみ味わえる「幻の味」だ。
首都ダッカに本社を置く民間企業クラウン・ビバレッジが2009年に製造・販売を始めた。取り扱うのは政府から販売許可を得たバーや高級ホテルのレストランなど約200カ所。同社幹部のラフィクル・イスラム氏は売り上げの詳細を明かさなかったが「それなりの本数を出荷している」と胸を張る。
親会社ジャムナ・グループで販売を統括するウガル・ロイ氏によると、卸値は330ミリリットル缶1本140タカ(約180円)、瓶は150タカ。小売りでは2倍以上の価格で販売され、中には希少価値から1缶840タカと強気な価格設定をしている店もある。
アルコール度数は5%。麦芽はベルギーから、ホップは米国から輸入している。最近は原材料価格の高騰に悩まされ「アルミ缶の値段も以前の2倍になってしまった」とため息をつく。
イスラム教国ならではの難しさもある。販売開始当初、イスラム主義政党のイスラム協会(JI)がビール製造に反対したことがあった。大きなうねりにはならず、その後、目立った反対行動は起きていないが、ロイ氏は「広告を出せず、公然とマーケティングもできない」と話す。
政府の認可を得たとはいえ、担当部署は麻薬取締局で、ビールの存在は市民権を得ているとは言い難い。
それでも外国人を中心に根強い人気がある。提供しているダッカ市内の五つ星ホテルのラウンジスタッフは「外でアルコールを召し上がれない外国からのお客さまが楽しんでいる」と明かす。
同じくハンターを出しているダッカのバーの店員は、自身は飲んだことはないとしながらも「ライバルは(世界的なビールブランドの)ハイネケンだ」と威勢の良さを見せた。(共同)

