5日、東京・豊洲の東京中央卸売市場では2023年の初競りが実施され、注目のホンマグロ(クロマグロ)は、3年連続で仲卸「やま幸(ゆき)」の競り落とした大間産212キロが3604万円で落札された。1キロ単価は17万円。この日取引で最高値の「一番マグロ」となった。

1キロ17万円の値をつけたことについて、やま幸の山口幸隆社長は「通常で考えれば、やっぱり高いですよ」と真顔でこたえたものの「でも、お正月だし、ご祝儀という形ではちょうどいいところで着地したんじゃないですか」とすぐに笑顔に戻って満足そうにほほえんだ。

競りは10万円から競り始め、3社の競合となった。1万円ずつ「11万」「12万」…とテンポよく値が上がり、他社から「16万」と声が掛かったところで山口社長が「17万」と声を掛けて落着した。昨年は世界的な物資の値上げ状態が日常化したが、山口社長は「昨年、マグロ相場は落ち着いていた。例年、年末になるとマグロの値がグンと上がるんです。太平洋側の気仙沼港や塩釜港でのかなり釣れたことも影響したからなのか、競り値で苦しまなかった。こんな12月は珍しかった」と振り返った。

12月31日、釣りあげた大間港「新栄丸」竹内正弘船長(71)は「断トツにいいマグロを釣り上げた」と山口社長に電話で伝えた。150本のはえ縄に早朝ヒットしていた。「海の波が高かったけど、今年の大間沖はいい状況が続いていたから、期待はしていた」と竹内船長。これで東京中央卸売市場の初競りで獲得した一番マグロは7度目となった。「いいマグロだけど、これでまさか7度目をとれるとは思っていなかった」と驚き「でも、やっぱり一番マグロ、うれしいね」と笑いながらこたえた。

「やま幸」とタッグを組んで一番マグロを競り落としたすし店を含む和食レストランを展開する「銀座おのでら」の坂上暁史料理長は「本当に素晴らしいマグロです」と落札直後にマグロと対面し「コロナで(世間が)沈んでいた時期もあった。やま幸さんとわれわれ3年連続で一番マグロをとれましたけど、こういう時期だからこそ、みなさまに幸せを届けられたらなぁという思いでいっぱいです」と話し「(銀座おのでらが)今年で開業がちょうど10年。‘一番’を落とせたのは意味があるし感慨深い」と喜びをかみしめた。

競り場には鑑札も持った仲卸関係者しか入れず、坂上暁史料理長は長尾真司社長と市場の近くで携帯電話とにらめっこしながら山口社長からの連絡を待っていた。そのときの心境は「ワクワクというよりもドキドキ」とほおを紅潮させて語った。212キロのマグロからは約8000貫のすしが握れるが「銀座おのでら」の運営母体「フードサービスONODERA」の長尾真司社長は「一番マグロだからと特別な値段はつけません。通常価格ですね。赤身とトロの計2貫セットで1040円。5日午後1時から表参道の回転すし店で通常販売します」と話した。【寺沢卓】