東京・神宮外苑地区の再開発計画をめぐり、1月20日に事業者側が作成した環境影響評価(アセスメント)の評価書を告示した東京都に対し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)諮問機関「イコモス」の日本国内委員会のメンバーが25日、都内で開いた会見で、都の環境影響評価審議会で再審議を行うよう要請した。

日本イコモス国内委員会理事を務める石川幹子・中大研究開発機構教授は「科学的、客観的な方法論で調査、予測し、評価するのが環境アセス。(事業者側の調査は)科学的な方法論がとられていない」と述べ、都が告示した環境影響評価書は「非科学的手法で行われた群落調査」に基づいて作成された内容と主張。「イコモスはこれまで全力で調査してきたが、事業者は(調査内容に)耳を貸さなかった。調査の内容が根本的に間違っている。論拠がない非科学的な調査書であり、再審議をお願いしたい」と訴えた。小池百合子知事や都議会議長、審議会の会長に要請書を送付したという。

具体的には、評価書案における「知事意見」に対して、複数の項目で基本的要件に反していると主張。再開発による大量の樹木の伐採・移植に伴う生態系の崩壊が起きるとした上で、「知事意見に必須とされた科学的方法論を導入せず、誤った現状分析に基づく予測・評価を行っている」などと指摘。新しく建設される野球場と近接するため、根の生育などに悪影響が出るとの懸念があるイチョウ並木の現状についても「検証不可能な、根拠なきデータの積み上げが行われている」と訴えている。

事業者側は昨年12月、審議会に指摘された事項を踏まえた上で修正案を報告し、今年1月10日付で評価書を提出した。都の告示はこれを受けたもの。都が今後認可した上で、着工が可能となる。

これまで、再開発計画に関してさまざまな問題点があると指摘してきた石川氏は「残された時間、イコモスとしてきちんとした義務を果たしたい。(関係者には)しっかりした対応をしていただきたい」と、訴えた。

再開発計画では、現在の神宮球場と秩父宮ラグビー場は解体されて場所が入れ替わり、商業施設が入った高層ビルも建設される。完成は2036年の予定。

一方、現計画では多くの樹木が伐採されるとして反対運動が続いており、反対の署名は11万人に達した。国会では、超党派の「神宮外苑の自然と歴史・文化を守る国会議員連盟」も発足した。