将棋の最年少5冠、藤井聡太王将(竜王・王位・叡王・棋聖=20)が羽生善治九段(52)の挑戦を受ける、第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第3局が28、29の両日、金沢市の「金沢東急ホテル」で行われ、先手の藤井が95手で羽生を破った。巧みな攻めで“羽生マジック”を封じ込めた藤井は、対戦成績を2勝1敗とし、初防衛、5冠堅持に前進した。

2敗目を喫した羽生は、前人未到のタイトル100期を目指す。第4局は2月9、10日、東京都立川市「SORANO HOTEL」で行われる。

   ◇   ◇   ◇

羽生は左手で額をなでながら言葉をしぼり出した。「封じ手の後手4二玉がいい手ではなかった。代わりに何をやるかも難しい。まとめ方に問題があったような気がします」。2日目の午前中、自玉の上部脱出を図るが阻まれる。「何か変化を考えなければいけなかったと思います。お昼休みの時点ではダメでした」。

開幕局の意表を突いた一手損角換わり、快勝譜となった前局の相掛かりに続き、今局は昭和初期に流行した雁木(がんぎ)を採用した。「未解決の部分もあると思って指してみました」。

対局開始直後は、振り飛車をにおわすような指し手も見せた。「相手の出方次第で、居飛車と振り飛車の両方を見せながら駒組みを決めようと思っていました」。ゴキゲン中飛車や四間飛車などの振り飛車も含め、何でも指しこなす。変幻自在な棋風に加え、準備してきた研究手順を、タイトル戦というひのき舞台で三たび披露した。

うまくまとめ切れずに今局は敗れてしまったが、第4局は自分から局面を誘導しやすい先手番。同じ先手番の第2局は快勝だった。その再現なるか。「気持ちを切り替えて、また次に臨みたいと思います」。偶数局で勝ってタイに追いつく展開なら、王将戦がますます盛り上がる。【赤塚辰浩】

◆雁木 将棋の囲いのひとつ。鳥の雁の群れが斜めにジグザグに連なって飛ぶ様子に見立てたことが名前の由来とされる。自身の玉の前に銀や金を配置するのが一般的。手数がかからず、攻守に柔軟性があるため早めに仕かけることができる。