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80年代ヒット曲がうけるワケ NHKBS「歌える!J-POP」長尾賢治プロデューサーが語る

[2023年4月15日10時25分 ]
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NHK「歌える!J-POPシリーズ」を制作している長尾賢治プロデューサー
NHK「歌える!J-POPシリーズ」を制作している長尾賢治プロデューサー
  • NHKBSプレミアム「歌える!J--POP黄金のヒットパレード決定版!」の司会を務める、右からDJKOO、平野ノラ、廣瀬智美アナ
  • CD生産金額とストリーミングの売り上げ

<ニュースの教科書>

ヒット曲が出にくい昨今、テレビの音楽番組も、新曲より過去のヒット曲による編成が目立ちます。背景にはサブスク全盛による、シティ・ポップ&昭和歌謡ブームの影響もあるのでしょう。世の中の昭和レトロブームは根強く、単なる昭和サウンドにならない点も大きいようです。このジャンルでリードしてきたのがNHK。BSプレミアムで「歌える!J-POP黄金のヒットパレード決定版!」(年3回放送)など「歌える!J-POPシリーズ」を制作している長尾賢治プロデューサーに、80年代などの楽曲が受ける理由を聞きました。【竹村章】

    ◇    ◇    ◇

日本レコード協会の統計によると、CDは98年の生産金額5878億円をピークに、21年は1232億円まで縮小した。昨年は1298億円とやや盛り返したものの、ダウンロードとともに縮小傾向は続く。その一方で、サブスクは22年に928億円まで拡大。今年は1000億円突破が確実視され、CDを追い抜くのも時間の問題とみられる。

このサブスク普及とともに、世界でも再評価されてきたのがシティ・ポップ。BTSのヒット曲「Dynamite」も80年代の香りがするディスコポップだった。この80年代サウンドのブームで、竹内まりや、山下達郎、大滝詠一らのシティ・ポップが世界中で愛好者を増やしていった。

とはいえ、サブスクは数千万曲をそろえる、いわば巨大な図書館。すべての本が開架書庫に並ぶのは不可能なように、優れた楽曲でも埋もれがちになる。多くのファンがいる大御所アーティストも、ファンの年齢層は高く、情報発信力が弱いと、再生回数を伸ばすことはできない。

昭和の音楽番組はベストテン方式が主流だった。人気歌手は年に数回は新曲をリリースし、ランキングをにぎわせた。平成に入ってからも、音楽番組はアーティストが新曲を歌う場であることに変わりはなかったが、その新曲の世間的な認知度は下がり、次第に、誰もが知る過去の名曲へのニーズが高まった。

-過去のヒット曲中心の番組にしたのは

長尾氏 80年代に青春を送った方々はまだ、テレビを好きなんですよ。極端に言うと、40代以下はあまり見ず、10代だとゼロに近い。NHKは昔からこういった番組がありましたが、民放もやっとそこに気づいたんでしょう。民放も80年代をやりだしたので。だから、多分、諦めたんですよ。若い世代が望むものにこびたりするのは。

-テレビを見る世代に照準を合わせたキャスティングということですか

長尾氏 番組のキャッチコピーに「音楽は、存在する唯一のタイムマシン!」とあります。80年代前後に青春を送った世代は、喫茶店で音楽が流れていたり、ダビングした自作のカセットテープを作ったり。視聴率の区分だとM3、F3の人たちに向けて、そういう昔の空間に持っていこうっていう企画なんです。

-必然的に新曲ではなく過去のヒット曲に

長尾氏 アーティストは新曲を歌いたいかもしれませんが、知らない曲だとなかなか難しい。だから、視聴者が聞きたい曲、歌える曲を歌ってもらってます。

-旧譜も新しいコラボだと新鮮な感じもします

長尾氏 最近だと、反響が大きかったのは大黒摩季さんとTRFのYU-KIさんのコラボですかね。2人は初めてコラボしたんですよ。僕は2人とも30年前から関係があったから、くどいてみたら「面白い! やりましょう」ってことに。最後に「ら・ら・ら」を2人で歌唱したら、ファンは奇跡のコラボだって思われたみたいです。そういうチャレンジは、毎回やろうとしています。

-結局、80~90年代はヒット曲が多かったと

長尾氏 昨年の紅白でも中森明菜さんがいろいろとニュースになりました。これは、テレビを見る世代が彼女を好きで、落ち着いて見られるアーティストだということなのでしょう。80年から00年代くらいまでは、CDも売れて、お金があったから、手間ひまかけた、いい楽曲が多かったということだと思います。過去のヒット曲を聴いて、もう1度聞きたいと思って、サブスクに登録してくれればいいのかなと。一番いいのは、CDを買ってくれることなのですが。

-過去のヒット曲だとCDは売れず、サブスクも実入りは少ないです

長尾氏 よくヒット曲がないって聞きますけど、それは音楽が、それほど生活の中で重要ではなくなってきたのかもしれません。昔のミュージシャンはマネタイズできたけど、今は、あまり割のいい商売ではないのでしょう。録音もPCでできる。自ら発信も可能になり、レコード会社という音楽の媒介の仕事も減ってくる。必然的に全体のパイが縮小傾向になっています。昭和のJ-POPや歌謡曲を聴いている人たちも、あと、10年20年たつといなくなって、雅楽(古典邦楽? や民謡)のような、文化として、国からの補助金がないと成り立たない世界になるのかもしれません。

-さびしいですね

長尾氏 でもね、先日も野口五郎さんと話したんです。よく何億回再生とか言うけど、アーティスト側にはお金が入るかもしれないけど、ユーザーはお金は払ってないでしょって。僕のファンは、お金を払って来ていただけて、コンサート会場でCDを買っていただけるんです…って。たしかに、五郎さんもそうですが、八神純子さんや、渡辺真知子さん、岩崎宏美さんなどのコンサートに顔出しますが、いつも満席にお客さんが入っている。みんな公演後に握手をしながらCDを「手売り」しているんだけど、すごい行列だった。何百人も並んでいるんです。「コンサートがあるなら行きたい」という問い合わせがNHKにも来るくらいですから。僕は、もっとこの番組を利用して欲しいって思いますね。

-世代間格差ですね

長尾氏 ただ、我々も過去ばかりを引っ張ってきているわけでもありません。若い才能の発掘もしています。今回もトランペッターでキーボード奏者でもある藤井空さんには、五郎さんの「甘い生活」を演奏してもらいました。過去の名曲が現代のアーティストに伝播(でんぱ)して、若い世代にも、あれは良い楽曲、新曲として広がるんじゃないかと思っています。民放のワイドショーのコメンテーターを務める、ハーバード大学やジュリアード音楽院を首席卒業したバイオリニストの廣津留すみれさんやストリートピアノで有名なハラミちゃんなんかもレギュラーミュージシャンです。番組で新しい才能を育てることも責務だと思っています。

◆NHKBSプレミアム「歌える!J-POP黄金のヒットパレード決定版!」 年に3回、これまで第8弾まで放送された。誰もが歌えるヒット曲や誰もが歌えるカバー曲の数々を大熱唱する。第9弾は、野口五郎とハラミちゃんが「ラヴ・イズ・オーバー」を披露する。ほか出演は、太田裕美、加藤いづみ、華原朋美、杏子、SHOW-YA、杉山清貴、なかざわけんじ、HOUNDDOG、花*花、hitomi、B.B.クイーンズ、三浦和人。司会はDJKOO、平野ノラ、廣瀬智美アナ。BS4Kでは3月に先行放送され、BSプレミアムでは5月以降の放送予定。

【80年~90年代ブームのアラカルト】

◆「真夜中のドア~stay with me」 松原みきが79年にリリースしたデビュー曲。インドネシアの女性シンガー、レイニッチがカバーしたことなどをきっかけに、レコード会社も仕掛け、20年12月にはSpotifyのグローバルバイラルチャートで18日間連続で1位を記録。これが話題になったことで、アメリカ、欧州各国、アジア各国のバイラルチャートでも1位に。アップル・ミュージックでは92カ国のJ-POPランキングでトップ10入りを果たした。YouTubeの再生回数は計1億回を超えた。

◆バブリーダンス 17年、大阪府立登美丘高校のダンス部が、荻野目洋子の楽曲「ダンシング・ヒーロー」で踊るダンス動画が話題に。荻野目本人もツイート。夏の全国大会は惜しくも準優勝に終わるが、80年代の派手な髪形や洋服、メークなどの当時のファッションが、現代の若い世代には斬新でキャッチーだった。バブリーダンスはYouTubeやSNSでバズり、メディアでも取り上げられた。お笑いタレント平野ノラのバブリーネタもその下地にはあり、この時の主将だった伊原六花はその後芸能界入り。

◆ポカリスエットCM 15年にスタートした吉田羊と鈴木梨央が母娘役で、過去の名曲を2人で歌唱するシリーズ。Yellow Magic Orchestra「君に、胸キュン。」松任谷由実「瞳を閉じて」「サーフ天国、スキー天国」ZARD「揺れる想い」小沢健二「さよならなんて云えないよ」小泉今日子「木枯しに抱かれて」など昔のヒット曲をたびたび起用。

◆過去のヒット曲を若手がカバー 上白石萌音が21年6月に、昭和歌謡のカバーアルバム「あの歌-1-」「あの歌-2-」をリリース。「1」はオリコン週間ランキング6位、「2」も7位に。橋本愛は太田裕美「木綿のハンカチーフ」をカバーし「THE FIRST TAKE」でも披露した。TikTokは「#昭和に憧れる」キャンペーンを始め、昭和歌謡を使用したショート動画が公開され「異邦人」「悪女」などが投稿され話題に。作曲家筒美京平さんが亡くなった時には、手がけた尾崎紀世彦さんの「また逢う日まで」(作詞阿久悠)が、「レコチョク」デイリーシングルランキングの「歌謡曲・演歌部門」で1位になった。

◆竹村章(たけむら・あきら)1987年(昭62)入社。販売局、編集局地方部などを経て文化芸能部。芸能全般のほか、放送局などメディア関連の担当が長い。テレビ特集ページ「TV LIFE」や「ドラマグランプリ」を立ち上げる。女優奈緒のインタビューで、お母さんの影響から吉田拓郎ファンになった話を聞き、現在の80年代ブームに納得している。

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