昨年末から、アニメやゲームで人気の「ポケットモンスター」のトレーディングカードを強奪する窃盗事件が全国で相次いでいる。事件の背景にはカード人気の過熱で、希少品が高額で取引されたり、投資の対象になっている背景がある。

4月には秋葉原の買い取り店舗に侵入しポケモンカード約1500枚(約115万円相当)を盗んだとして、建造物侵入と窃盗の疑いで沖縄県の男(35)を警視庁が逮捕した。男は「ツイッターの求人から指示を受けた」と供述。百数十万円の報酬を提示されていたが支払われなかったという。

事件被害に遭った店舗とは別の、秋葉原にある国内最大級のポケモンカード専門店「晴れる屋2」渡辺翔店長(36)に14日、カードにまつわる状況について解説してもらった。同店は2021年7月に開業。過去に1枚5000万円のカードの販売実績もある。

ポケットモンスターは1996年2月に販売開始されたゲームボーイ用のゲームソフトから派生したテレビアニメ、グッズ、映画などで多展開したコンテンツの総称で、カードゲームは97年から始まった。

ゲームは1プレーヤーが60枚のカードを持って1対1の対戦をする方式。渡辺店長は「ポケモンのキャラクターは全世界で人気が出ましたが、当初、カードゲームは爆発的なブームにはならなかった」として「火がついたのは5年前ぐらい前になります」と解説した。

きっかけは、16年から始まった携帯電話の位置情報を使った「ポケモンGO」だという。「それまで若い男性を対象としていたが、ポケモンのキャラクターを探して見つけることが流行となって、老若男女が興味を持つようになったんです」。そして「ゲーム性だけではなくカードのコレクションとして価値が上がった」と語った。

定価以上の価値がつくのは、カードの大会で配布される非売品や、初版で間違ったまま印刷されて第2版で間違いが修正されたことで希少価値が出たカードが多いという。

例えば、少女キャラの「リーリエ」は市販されていない“配布限定のレアもの”。渡辺店長によると「3300万円の値のついたリーリエを現認したことがあります」。また、「かえんポケモン」に分類されるはずの「リザードン」が、間違って「かいりきポケモン」とミスのまま印刷された「かいりきリザードン」は、カードマニアの間では人気アイテムになっている。

さらにキズやくすみのないカードの保存状態の良いものも高値で取引される。「ポケモンカード専門の鑑定会社PSAの『評点10点』の認定のあるものも高値で売れますね」(渡辺店長)。

カード販売店への強奪事件が多発しているが、渡辺店長は高額なカードの管理を徹底している。「ショーケースが破壊されて盗まれても、高額なものは置かないようにしている。高額なカードは通信販売で扱うようにして、被害があっても最小限に食い止められるようにしています」と話した。

カードの総販売枚数は20年が37億枚、21年91億枚、22年が94億枚と販売実績を順調に伸長。まだまだポケモンブームは続きそうだ。【寺沢卓】

◆ポケモンカード ゲームソフト「ポケットモンスター」シリーズの世界観を対戦型のゲームにする際に使用するトレーディングカード。イラストだけではなくポケモンについての解説、ポケモンの繰り出すワザや強度についてのスペック(性能)の情報も掲載されている。株式会社「ポケモン」ホームページによると、製造累計は今年3月末で89の国と地域(14言語)で529億枚以上。通常価格は中身が見えないようにパッケージされて5枚セットで200円。テレビアニメ「ポケットモンスター」は192の国と地域で放送されている。