国立科学博物館(東京・上野)が7日、標本・資料の収集・保管活動の継続を掲げて、1億円を目標にクラウドファンディング「地球の宝を守れ-国立科学博物館500万点のコレクションを次世代へ」を始めた。コロナ禍や物価高も重なり、資金的に大きな危機に直面していると訴えている。7日朝に始まったクラウドファンディングには多くの支援が殺到し、同日午後5時20分ごろには早くも目標金額の1億円を突破し、一時はサイトにつながりにくい状態になるなど、上々のスタートとなった。

科博は1877年(明10)に創立された、日本で最も歴史のある博物館の1つで、自然史、科学技術史に関する、国立で唯一の総合科学博物館。登録標本・資料数は500万点を超え、毎年数万点ずつ増えている。上野の館内に展示している標本・資料は二万数千点とその1%未満にすぎず、大半は茨城県つくば市の研究施設の収蔵庫に保管されている。この数は、大英自然史博物館の約8000万点、米スミソニアン国立自然史博物館の約1億5000万点など、海外の主要自然史博物館と比べて、大幅に少ないという。

科博は、標本・資料の収集・保管の現状について「収蔵庫はスペースの確保が難しい状況で、受け入れたものの人手不足で整理できず廊下に山積みで保管されているものもある。資金不足を理由に、受け入れをやむなく断っているコレクションも多く存在する」などと説明している。

その上でクラウドファンディングに至った経緯について「ただでさえ余裕がない運営体制だったところに、コロナ禍によって入館料収入は大きな影響を受け、昨今の物価高による光熱費や保管容器・溶液等の高騰、現在建築中の収蔵庫建築資材や人件費などの高騰による費用の大幅な増加が続き、自助努力や国からの補助だけでは対応ができず、活動が縮小・停止を余儀なくされている」とし、理解を求めた。例えば、入場者は19年度が約267万人だったのに対し、20年度は約50万人。今年度の光熱費は21年度からほぼ倍増し、約3億8000万円の見込みという。

多くの支援の動きを受けて、科博の担当者は「こんなにすぐに反応していただけて、びっくりしています。激励の電話も多くいただいています」とうれしい悲鳴を上げている。目標金額には達したが、支援は期限の11月5日まで受け付ける。