大相撲東前頭15枚目の熱海富士(21=伊勢ケ浜)が23日、静岡出身力士としての初優勝に王手をかけ、熱海市役所では千秋楽の24日のパブリックビューイング開催が決まるなど、フィーバーが過熱している。
熱海富士が相撲を始めた小学5年から指導した三島市の杉山信二さん(60=三島市相撲連盟会長)は、熱海富士が単独首位になった瞬間、「とんでもないことになりそうだ」と声を震わせ、千秋楽の快挙を待ち望んだ。
熱海富士は三島市で開かれたわんぱく相撲地区大会「三島場所」の「小学5年の部」で他の選手を寄せ付けずに優勝。あまりの強さに、杉山さんは「これはすごい逸材」と感じ「本格的に相撲をやらないか」と三島相撲クラブにスカウトした。三島市の中学に入学して柔道部に入ったが、杉山さんに「勝負が早いし相撲の方が自分に合っている」と訴えてきたといい、相撲部のある熱海中に転校。中学3年まで杉山さんが指導した。
高校は相撲部の名門、飛龍高校(沼津市)に入学したが、熱海の自宅からは遠かった。高校生活に慣れるまでは沼津に近い三島市で杉山さんが経営する「光玉母(こうぎょくぼ)食堂 めししんちゃん」に約半年下宿させ、食堂から高校までは毎日約30分、自転車で登校していた。
熱海富士の本名は「武井朔太郎」。食堂では皿洗いなどアルバイトもしていて常連から「さくちゃん」と呼ばれてかわいがられた。デカ盛りで有名な食堂で、熱海富士は2キロ近いご飯にフライパンのまま出す「焼き肉&から揚げ定食」に加え、ラーメンをみそ汁代わりに平らげていたという。
杉山さんは熱海富士について「もう、ひょうきんなんだよ。明るくてよくしゃべる。どこにいてもムードメーカーで周囲を盛り上げちゃう」と語る。「でもおちょうし者でもなく、早起き。稽古も真面目。小さいころから『前に出ろ、前に押せ』をずっと守っている」とし「緊張せず、稽古でやってきたことを出し切ってほしい」と語った。
地元の熱海市役所では福祉センター3階の大広間で100人規模の特設会場でパブリックビューイングを行う予定だ。三島市の杉山さんの食堂でも、常連たちが集まって、その瞬間を見守る。【寺沢卓】