水軍の基地か、城の石垣を思わせるような重厚な造りが目に飛び込んでくる。高松市の五色台山上にある「瀬戸内海民俗歴史資料館」は建築学会で注目を集める建造物で、昨年10月には国の重要文化財に指定されている。

注目はその外見だけではない。海を背景に発展してきた展示物の多さだ。漁業を中心とした用具や船、自然環境を生かした製塩業、温暖な気候を生かした稲作と地域の特性でもあるため池などで使われる道具は全部で約6000点。大阪府から中・四国、福岡県や大分県まで11府県にまたがる瀬戸内地方でつづられてきた歴史を物語っている。

中でもスペースを割いているのが船だろう。伝馬船をはじめとした木造船が数多くある。エンジン船が登場するまで漁業、物流、海運に貢献してきた。漁に何日も生活できる船、漁場で水揚げされた獲物を高松、大阪や神戸、広島、福岡といった都市圏に運ぶ船、潮回りによっては川の浅瀬のような急流になったり、うずしおが起こる海にも耐えられるよう船底の幅を狭くした船など、用途に応じたものが展示されている。中には櫓(ろ)をはじめとした船大工の用具などもある。櫓かじ大工は今、広島県尾道市に1人残っているだけという。

この地方は第1次産業である漁業(水産業)が、第2次産業である工業としての造船業や物流・運搬業をも発展させた。さらに、第3次産業としてのサービス業、すべてをまとめた「第6次産業」として地域の振興に貢献している。

日本のさまざまな産業拠点は今、海外に移っている。瀬戸内海は1934年(昭9)、雲仙天草、霧島錦江湾とともに日本で初めて国立公園に選定され、昨年で90年を迎えた。その美しい景色と歴史に加え、「ものづくり」の原点、必要性をこの資料館では再認識させてくれる。