書評家で作家の東(あずま)えりか氏(67)の「見えない死神 原発不明がん、百六十日の記録」(集英社)が出版された。
日本人の2人に1人ががんになると言われている現代、「原発不明がん」と診断された夫が亡くなるまでを詳細に記録した闘病記であり、がん治療の最前線に携わっている医療専門家へのインタビューを収録したノンフィクション作品。昨年の第22回開高健ノンフィクション賞最終候補作。
夫の東保雄さんは、原因不明の腹痛に襲われ、診断の結果は「腸閉塞(へいそく)」。入院して検査を繰り返したが、原因が特定できない状態が続いたという。
他の病院でセカンドオピニオンを求めたが、新しい情報や手掛かりは何も得ることができない。「がん細胞が見つからない限り、がんではない」という、医師の言葉を信じるしかなかった。
その後も時間だけが過ぎ、保雄さんはどんどん衰弱していった。保雄さんは製薬会社に勤務し、抗がん剤の開発チームの一員(厚労省への交渉役)だった。その後、都立病院にスカウトされがんの治療薬に携わっていた専門家だった。
東氏は「読者の方に反響をいただいて、その感想を見る度ごとに私自身が泣いています。人ごとというより、がんというのが近い、身近な病気になっている。怖いですよね。がんに対して、知識として植え付けられているようで実は植え付けられてなくて。『早期発見して、そこで取ってしまえば安全だよ』と言われるのは、どういう理由なのか。みんな、知らないんですよね。実は私もそんなに良く分かってなく。本人は割と知識はあったんですが。ですから、すごく神経質に1年に1度、同じ日に大枚を払って人間ドックにかかっていました」と振り返った。
腸閉塞で入院したはずが、検査しても良くならず、3カ月近くが過ぎ、突然、がんの細胞が出てきた驚き。原発不明がんとは、十分な検査を行ってもがんの原発巣(最初に発生した場所)が特定できず、転移した病変のみが確認される悪性腫瘍。
芸能界では、いかりや長介さん(2004年3月20日に72歳で死去)や角替和枝さん(2018年10月27日に64歳で死去)、森永卓郎さん(2025年1月28日に67歳で死去)、和泉雅子さん(2025年7月9日に77歳で死去)の例がある。
原発不明がん「ステージ4B」であることを公表した雑誌編集でタレントの山田五郎(67)は、がんがリンパ節や骨に転移。腰椎圧迫骨折も起こしているが、抗がん剤治療を受けながら仕事を継続している。
東氏は「この本を書いたのは、夫が亡くなったことに対しての私の後悔と怒りです。自分が悪かった。もっとできることがあったのでは。よくもめた時には『言った』『言わない』『記録がある』『記録がない』となりますので、役に立つかもしれない」と、最初の診断の時から「記録を録らせてください」と全てのやりとりを収録している。
さらに、国立がん研究センターへの取材も行った。相談できる窓口はどこにあるのか。最新治療の現状はどうなっているのか。東氏は「決着はついていませんが、納得はできました。一つの記録として、啓発としての一冊として残しておきたいんです」と話している。

