元大阪地検検事正が部下への準強制性交罪に問われた事件をめぐり、被害者の女性検事ひかりさん(仮名)が日刊スポーツのインタビューに応じた。
過去の犯罪被害経験から検事の職に進み、順調にキャリアを重ねる中、上司による性犯罪事件の被害者に。心身の不調や二次被害にも遭い、検事でありながら被害者の立場で検察組織と闘う中、今春自らの意思に反し辞表提出を余儀なくされた。国や検察を相手取った裁判にも踏み切った。「法曹界に今、絶望している」と話すひかりさんに思いを聴いた。
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今年4月末に辞表を提出したひかりさんは、検事の退職手続きのさなかにある。「復職したかった。でも検察に辞職に追い込まれた」と話す。
元大阪地検トップ北川健太郎被告は事件をめぐり、24年10月の初公判で起訴内容を認め謝罪したが、その後の同年12月、無罪主張に転じた。第2回公判は日程の見通しすら立っていない。この間、検察組織では、ハラスメントの不祥事が相次いで発覚している。「検察や法務省には自浄作用がない」との思いを強め、「氷山の一角であっても暴かれてきている中、組織の構造的問題を改善するためにも、第三者委員会の設置はどうしても必要不可欠」と口にする。
検察の道を志したのは、犯罪被害の経験から。何者かにつけ回されたり、痴漢被害を受けたり、検事になる前に別の仕事をしていたころには悪質なストーカー被害も受けた。犯人は見つからず、捜査に当たった警官には「別れ方が悪くて前の彼氏が来たんじゃないの?」と軽口をたたかれ笑われた。「こうやって泣き寝入りさせられたり、声を上げてもきちんと対応してもらえない被害者がたくさんいるのではないかと思った。もし、検事になれるなら、自分の目の前にいる被害者に寄り添い、一緒に闘い、犯罪を適切に処罰して被害者が安全に暮らせるようにしたい。二度と犯罪が起きないようにしたいと思った」。強い思いで検事の道に進んだ。
自身が主任検事を務めた性犯罪事件は、9割以上を起訴に持ち込み有罪となった。家族のサポートも受け仕事に打ち込み、キャリアアップも順調。手腕を買われ、捜査のあり方、被害者支援、被疑者との向き合い方を、検察や警察署で講義する立場にもなった。そんなさなかの18年9月、自身が性犯罪事件の被害者となった。痛みをこらえて仕事を続けたが、組織は守ってくれなかった。24年3月に心的外傷後ストレス障害(PTSD)の悪化で休職。事件被害も申告したが、上からは取り下げるよう圧力を受け、「あなた個人の被害」と言われ裁判準備に必要な時間も有給休暇で対応させられたと訴える。今年2月には、同僚の副検事が自身の名前や誹謗(ひぼう)中傷を周囲に拡散しているのを知りながら検察組織が止めず、全国や海外に二次被害を拡大させたなどとして、国などを相手取った裁判も起こした。
最近相次いで発覚する、検察組織で起きてきたハラスメント事案を、在職中は知るすべもなかった。「再発防止が全く取られていない。北川被告の事件は起こるべくして起きたもので、これからも必ず起きる可能性がある」と訴える。理不尽な犯罪に傷付けられた被害者に寄り添いたいと、性被害事件や強行犯事件を中心に担当してきたひかりさん。企業犯罪などはあまり扱っておらず企業不祥事では定番の「第三者委員会」という仕組みも「恥ずかしながらよく知らなかった」と明かす。25年1月に設置されたフジテレビ問題の第三者委についての報道でその仕組みを知り、今は必要性を痛感している。
「刑事司法は茶番。事件の実態を知っている被害者はないがしろにされてかやの外に置かれ、検察の都合で証拠を作る、作らない、証拠を出す、出さないを決められ、いかようにもその事件を作り上げられるということの恐ろしさを体験中だから」と語る。「裁判所しか信じられない。適切な訴訟指揮をしてくれなければ、北川裁判も茶番になってしまうと思います」。使命感を持ち、やりがいを感じて仕事をしてきたからこそ「法曹界に、今すごく絶望している」とも話す。
ひかりさんは、重度のPTSDを負わされており、現在の起訴罪名である準強制性交罪から、裁判員裁判対象の準強制性交致傷罪への訴因変更を求めている。仮に、最後のとりでである裁判所までもが適切な訴訟指揮をしてくれないなら、裁判所も訴える方針だ。法曹界に身を置いて以来、いつもよりどころにしてきたのは法律。被害者とともに泣き、寄り添ってきた検事として、1人の被害者として、法律にのっとり、徹底的に闘うつもりだ。
ひかりさんにとっては孤独な闘いだが、それでも、被害申告からの2年で支援の輪は広がってきた。ひかりさんが受けた被害にともに怒り、声を上げてくれる一般市民の輪も徐々に広がりを見せており、大きな支えになっている。弁護士資格を持つ自民党の森雅子元法相らも連携し、検察改革の一環として、検察内に第三者委員会設置を強く求めている。ひかりさんは「もっと多くの方々が関心を寄せ、検察改革の声を上げてくださればと思い活動しています」と話した。

