11年目の菱田裕二騎手(29=岡田)が好調だ。今年はすでに32勝を挙げ、キャリアハイの14年(64勝)以来となる50勝超えが可能なペース。北海道では1日最多14頭もの調教にまたがるなど“馬合宿”の日々を送る。日曜札幌のエルムS(G3、ダート1700メートル、7日)では、つきっきりで仕上げた相棒アイオライト(牡5、武藤)で北海道重賞初Vを狙う。

気温20度前後の涼風に吹かれ、丸く大きな瞳は燃えるように輝いて見えた。来月に30歳を迎える菱田騎手はルーキーさながらに、ひたすら馬に乗り続ける。今週水曜の函館では午前5時半から9時までの調教時間で14頭に騎乗した。本人に聞くと、おそらく自己最多記録だとか。下馬しては乗るの繰り返しで、1度も休憩せず馬上にいた。

「しんどいですけど、こんなに馬に乗れるチャンスがあるのは夏の北海道だけ。1頭でも多く乗ろうと思ってます。たくさんの馬に乗ることで、少しでも向上できるように」

夏の“馬合宿”といったところか。午後には体幹などのトレーニングにも取り組むが、やはり調教騎乗に勝る鍛錬はない。その表情には充実感が漂っている。今年は現在32勝。早くも昨年の34勝に迫り、8年ぶりの50勝突破も可能なペースだ。春にはダイヤモンドSを制したお手馬テーオーロイヤルとともに天皇賞・春で3着に食い込んだ。

「去年は3着が(45回で)多かったんですけど、後半からリズムが良くなって、それが騎乗数にもつながってるのかなと思います」

今週のエルムSでは、つきっきりで調教をつけるアイオライトと重賞Vを狙う。追い切り日以外も手綱をとって手塩にかけてきた。武藤師も「いつも任せている。師匠(岡田師)も理解してくれて、菱田はこの馬のために(札幌行きを延ばして)函館へ残ってくれた」と感謝する。木曜に人馬とも札幌へ。金曜と土曜も現地でまたがって最後の仕上げを施す予定だ。

前走では好位から抜け出して新境地を開いた。菱田騎手自身も「馬の後ろでためて、いい脚を使えた。調整過程としては今回の方がいいと思います」と手応えを口にしていた。“合宿”の成果を見せる時が来た。【太田尚樹】