史上8頭目の無敗の皐月賞&ダービー制覇を狙うソールオリエンス(牡、手塚)に迫る連載「ライジングサン ソール無敗2冠へ」の第2回は、鞍上の横山武史騎手(24=鈴木伸)を取り上げる。皐月賞の衝撃的な大外一気の差し切りに、2冠への大きな手応えをつかんだ。

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主戦の言葉は力強く、頼もしかった。皐月賞直後。ファンに向けたインタビューで横山武騎手は「この馬の強さは僕が一番知っているので、信じて乗ればいい結果がついてくると思いました」と口にした。はた目には絶望的な位置取りだった。4角17番手。ソールオリエンスは直線だけでライバルを一蹴してみせた。鞍上も焦りがなかったわけではない。「よく届いたな、と。そこはびっくりしました」。驚きの走りが2冠への手応えを増幅させた。

計り知れない素質を感じ取る。1週前追い切りに騎乗した17日、同馬への評価を改めた。「もっと大きな期待をしているし、秋でももう少し時間がかかると思います。それでいてこのポテンシャル。すごい馬です」。春先までは完成期を今秋としていたが、その時期を来年とした。一連の走りを背中で感じ、伸びしろを上方修正したのだ。この中間は特別な変化はなくとも「無事、順調に進んでいるのが何より」。変わらぬ信頼を置く。

ダービーでこそ-。この思いは早くから抱いていた。皐月賞前の追い切り後、同騎手は担当の名畑助手に言葉をかけたという。「ダービー向きだね」、と。レース中、指示を出す前にコーナーワークで手前を替えてしまう緩さがまだ残る。左回りの美浦ウッドで行われた1週前追い切りも、そんな点が見受けられた。だからこそ、のびのびと走れる東京での頂上決戦を楽しみにする。「馬自体は変わらないけど、条件が替わるので。広々としたコースが向いていると思う。スタミナ的なものは何も心配していない。距離に関していうなら、折り合いくらい」。未完成ながら、3戦3勝。底知れぬ可能性を最も大きな舞台で引き出す。【松田直樹】

◆横山武騎手のダービー成績 過去3回騎乗。19年にリオンリオンで初挑戦して15着。21年には皐月賞馬エフフォーリアとコンビを組み、勝ったシャフリヤールに鼻差及ばずの2着惜敗。昨年は2歳時にホープフルSを勝ったキラーアビリティの手綱を取り6着。