往年の名騎手が、ロイヤルアスコット開催最終日の24日土曜に行われたG1クイーンエリザベス2世ジュビリーS(芝直線1200メートル)で鮮やかによみがえりました。

J・スペンサー騎手(43)を鞍上に16頭立ての最低人気タイで、大一番に臨んだカーデム(せん7、父ダークエンジェル)は、ゴール手前で先を行く5番人気のセイクリドを首差かわして優勝。単勝81倍のダークホースが、ベテランのもとで波乱を巻き起こしました。

スペンサー騎手が、引退したM・キネーン騎手の後任としてA・オブライエン厩舎の主戦に座ったのは、今から19年前の04年。この契約はわずか1シーズンで終了しましたが、その後フリーとなったスペンサー騎手は05、07年に英国リーディング騎手の座に就き、10年からはカーデムの馬主であるヘイ夫妻と専属契約を結び、13年はカタールレーシングの主戦として活躍しました。

ハンサムでスキャンダルにも事欠かなかったスペンサー騎手ですが、不倫騒動がきっかけとなって離婚してからは私生活も乱れ、成績も下降。34歳で1度は引退を宣言しましたが、やはり騎手という職業を手放すことはできず、近年は再びフリーの立場で騎乗を続けていました。

スペンサー騎手のG1勝ちは、ダンステリアで制した19年7月の独ダルマイヤー大賞以来、約4年ぶり。1歳時のセリでドバイの故ハムダン殿下に75万ギニー(約1億4600万円)という高値で落札されながら気性難もあって、5歳の暮れに去勢されて、その後にヘイ夫妻に転売されたカーデムは、デビューから30戦目でのG1勝ち。知る人ぞ知る直線競馬の名手でもあるスペンサー騎手にとっても、貴重な勝利になったようです。【ターフライター・奥野庸介】(ニッカンスポーツ・コム/極ウマコラム「ワールドホースレーシング」)