ロブチェンを相棒に、史上初の牡牝3冠制覇に挑む松山弘平騎手(36)の真骨頂とは-。その名も「松山弘平の凄さ」と題した連載で、親交の深いホースマンたちを取材した。第3回は、松山騎手と今春の桜花賞を制したスターアニス(牝3)を管理する高野友和調教師(50)。馬上では勝負師、馬を下りれば愛されキャラ。トップジョッキーの二面性を漫画のキャラを例に挙げて説いた。
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スターアニスでのG1・2勝を含め、これまで「20」の勝利をともに積み上げてきた2人。高野師の目に、松山弘平という人間はどう映っているのか。
「愛されキャラじゃないですかね。鎧(よろい)をまとってないというか、話しやすい。会ったら、寄っていっちゃうので。彼は人間力がナチュラルに素晴らしいです」
師の話を聞いているだけで、松山騎手の柔和な表情が頭に浮かぶ。仕事仲間の前でも、ファンやメディアの前でも、振る舞いは変わらない。
裏表のない人格者にもオンオフのスイッチがある。それが馬だ。馬に乗ると、松山騎手は一瞬でアスリートに変わる。高野師は、漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の本田速人を例に出した。本田は普段は気弱だが、バイクにまたがると一変して強気になるキャラクターだ。
「普段は本当に接しやすいんですけど、馬上にいる姿を見ていると、こち亀の本田だなって(笑い)」
師が松山騎手に“本田”を感じたのは、16年マイラーズCをクルーガーで制した際。テン乗りだった当時26歳の鞍上は、ゲートで出遅れたものの、終始最内で我慢して距離ロスを最小限に抑える。直線では、ラチ沿いにわずかなスペースができた瞬間、一気に飛び込んだ。「松山は『死んでもいいと思って、突っ込んできました』と言って上がってきて。すげえやつだなと思いました。根性もすごい。勝負師ですね」。指揮官は鮮烈な印象を受けると同時に、気迫の騎乗に心をつかまれた。「僕は騎手出身じゃないので、競馬は基本的に騎手に任せるんですけど、その中でも松山には任せきれる。松山を乗せて負けたら仕方ないと思っています」と全幅の信頼を置く。
柔と剛を兼ね備えるのがダービージョッキー松山弘平だ。「人を引きつける魅力もあるし、乗り役としての技術もある。この人のすごさは、その両輪だと思います」と高野師。3冠が成就すれば、温かい拍手と祝福がたくさん届くだろう。松山騎手はそれを受け取るにふさわしい人物に違いない。【原田竣矢】

