史上初の牡牝3冠制覇に挑む松山弘平騎手(36)の真骨頂とは-。その名も「松山弘平の凄さ」と題した連載で、親交の深いホースマンたちを取材した。
初回の語り手はロブチェンやデアリングタクトの手綱を託してきた杉山晴紀調教師(44)。6年前の“直訴”を例に、柔らかな物腰に隠された芯の強さを指摘した。
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見かけによらない意思の強さに、驚かされたのを覚えている。
20年2月8日の京都10R。表彰式を終えて帰ろうとした杉山晴師は、検量室前で松山騎手に呼び止められたという。
「具体的な言葉までは覚えていないんですけど『この馬、ずっと乗せてください』みたいなことを言われたんです。珍しいなと。よくある『次もお願いします』とかではなく『ずっと』だったので」
その1頭こそ、のちの3冠女王デアリングタクトだった。大外から他馬を置き去りにするような豪脚でエルフィンSを圧勝。わずか2戦目で、たぐいまれな才能を見抜いたのだろう。
「まだそこまで接点が多くなかった頃でしたね」
開業5年目の当時は、今ほど強固な関係を築いていたわけではなかった。2人で挙げた白星は、デアリングタクトの新馬戦が2勝目。だからこそ、手放したくない思いを即座に行動へ移したのかもしれない。
普段はまさに「いい人」だ。誰もが口をそろえる。
「人を不快にさせることがない。僕も見習わないと…。普通なら、そういう騎手は競馬でも優しさが出てしまうんですけどね」
いざステッキを握れば、闘志を前面に出して攻める。あの日の思わぬ“直訴”も、内に秘めた芯の強さの表れだろう。
「去年ぐらいから長丁場のレースでも、不利を受けずにしっかり乗れるようになって、技術の面でもひと皮むけてきたのはあると思います。今回はすべての馬からマークされる立場になりますが、今の彼ならうまくかわしてくれるのでは」
そう、だから信じて手綱を託せる。【太田尚樹】

