過日釣り速報でお伝えした通り、小型旅客船等の安全対策について、日本釣りジャーナリスト協議会の要望で「国土交通省・水産庁・遊漁船関係者の意見交換会」が開催されました。その記事はこちら


当日、ここに参加した者として感じた違和感を2つを書きます。


まずは「当事者不在のまま、審議が進んでしまったこと」。今回の「船舶安全法施行等の一部改正」は、有識者による8回の審議が行われていますが、そこには遊漁船関係者が一切含まれていません。結果、遊漁船の実態とは懸け離れた内容で施行されようとしています。これは、意見交換会に出席した東京湾遊漁船協同組合関係者や遊漁船関係者の反応を見れば明らかでした。


今回の一部改正は22年4月、知床沖で起きた「KAZU 1」(カズワン)の事故を受けてのものですが、4月26日発付の国交省リリースには「遊漁船は含まない」と明記されていました。それが10月11日付で「遊漁船も含む」と一転していたのです。この間に果たして何があったのか? 意見交換会では国交省関係者は「すべての船舶における安全性の向上のため」としていますが、審議段階に肝心な対象となる遊漁船関係者はいません。旅客船にとっては実態に即した安全性向上かもしれませんが、遊漁船にとっては全く実態に即していないのです。


問題の2つ目は、その「実態に即した安全性向上ではない」ということ。


今回の義務化では「法定無線設備」「非常用位置等発信装置(EPIRB等)」「改良型救命いかだ等」の3つの義務化が改正の方向です。この中で遊漁船の実態に即していないのが「改良型救命いかだ等」になります。


「改良型救命いかだ等」ですが、これを新たに設置するには最低でも100万円以上が掛かるようです。遊漁船関係者に確認すると、「そんな金額では済まないし、5年ごとに定期検査もあるのでランニングコストも必要。複数の船を所有する宿は死活問題」との声もありました。別の関係者は「いかだありきで進んでいる感じ。というのは、これを設置すると船の大きさや重量が変わることもあります。それによって再検査を受ける必要も出てくるし、その費用も船宿負担なんです」。また、「バッグ式もあるようですが、重量が1個40キロ以上。船が沈もうとしているときにこれでは…」と疑問を口にしていました。


もう1つ追加しておくと、この救命いかだ購入に関する補助金もあるようですが、遊漁船関係者へのアナウンスが徹底される前に「『救命いかだ購入で補助金が受けられます。早くしないと間に合わないですよ』の連絡が来て詐欺を疑った」と話す遊漁船関係者もいました。「周知が先」と思うのは記者だけでしょうか?


意見交換会に出席した国交省関係者に今後、遊漁船関係者を加えた審議会の開催の可否を確認すると「できないわけではない」としつつも「開く義務はない」とのことでした。


このまま進めば年内には公布され、25年4月1日の適用が決まります。当事者不在のまま実態にそぐわない安全性向上のために、遊漁船は物理的にも経済的にも多大な負担を強いられ、最悪のケースとして「廃業」も想定されるのです。


遊漁船の安全性向上を否定するつもりは全くありませんが、釣りの担当記者として、そして釣り人として、最後に国民として、今回の一部改正には疑問を覚えます。相手は国なので「何言ってもムダだろう」。そう思うかもしれませんが、まずは声を上げなければ絶対に変わりません。声を届けるにはパブリックコメントしかありません。国交省HPのパブリックコメントから「船舶安全法施行規則等の一部を改正する省令案に関する意見募集について」で意見の入力が可能です。【川田和博】


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