カリフォルニアのワイルドフラワーの代名詞ポピーは、オレンジ色の花びらがひし形をかたどっています
カリフォルニアのワイルドフラワーの代名詞ポピーは、オレンジ色の花びらがひし形をかたどっています

近年の記録的干ばつで砂漠と化していたロサンゼルス(LA)は、2013年には観測史上もっとも乾燥した1年となり、カリフォルニア州のブラウン知事が水不足に関する非常事態宣言を出すなど干ばつが深刻化していましたが、一転して今年は大雨に見舞われたことで7年ぶりに水不足から完全に解放されました。年中晴天のイメージが強いLAですが、実は12月から3月にかけては一応の雨季にあたります。そして今年はこの時期に異例の雨が続いたことで、砂漠に野生の花が一気に咲き乱れる「スーパーブルーム」と呼ばれる現象があちらこちらで起きています。

斜面全体がオレンジ色に染まったレイク・エルシノアのウォーカー・キャニオン
斜面全体がオレンジ色に染まったレイク・エルシノアのウォーカー・キャニオン

特にLAから南に車で1時間半ほど下ったレイク・エルシノアでは、カリフォルニアの州花であるオレンジ色のポピー(日本名はハナビシソウ)が山の斜面一面で満開となり、見事な景色を織りなしています。LAとサンディエゴを結ぶ高速道路I-15に面した斜面全体がオレンジ色に染まり、運転手たちも思わず見とれる美しさから交通渋滞が発生しているほど。その様子がニュースで報道されるとLAやサンディエゴなど周辺の都市から大勢の観光客が殺到し、なんと先週末には人口6万人の街に15万人もの人が押し寄せてカオス状態になったといいます。ポピーが咲き乱れているのは、斜面沿いにハイキングトレイルがあるウォーカ・キャニオンという丘陸で、普段は地元の人たちの散歩コースになる程度ののどかな場所です。手つかずの自然がそのまま残っているのが特徴で、大型駐車場などはなく、斜面のふもとの道沿いに車を停めて歩くような本当に閑静な場所のため、一気に押し寄せた観光客に地元の人たちからは悲鳴が上がったといいます。

トレイルを歩きながら間近にポピーを楽しめます
トレイルを歩きながら間近にポピーを楽しめます

周辺の街からのアクセスは高速道路のみのため、高速道路は何十キロに渡って大渋滞。さらに降り口からキャニオンまでのわずか数分の距離も車が列をなし、駐車場スペースを探す人たちで大混乱。地元テレビの報道によると、まるでディズニーランドのような人ごみとなり、地元警察も出動して17日には急遽キャニオンへの入場が制限されたほどだったといいます。交通渋滞のみならず、ここ数日で急激に暑くなったことから炎天下での長時間の散策で熱中症を訴えて病院に搬送される人も続出。さらに山に生息するガラガラ蛇に犬が噛まれるなどの被害も多くあったといいます。

高速道路からの景色。オレンジ色のじゅうたんが遠くからでもきれいに見えます
高速道路からの景色。オレンジ色のじゅうたんが遠くからでもきれいに見えます
ここに咲いているのは全て野生のポピー
ここに咲いているのは全て野生のポピー

LA近郊のポピーの見所といえば、東京ドーム152個分の丘陸地帯一体がポピー保護区になっているLA北部のアンテロープ・バレーが有名ですが、毎年開花は4月から5月にかけてで、この時期にポピーが見られるのはLA近郊ではレイク・エルシノアのみ。しかもこれほどまでに満開になるのは10年に1度あるかないかとも言われるだけに、その美しさを一目見ようと大勢の人が押しかけているのです。しかもここは自然保護区ではないため、入場料もなく誰でも自由に訪れることができ、トレイルは愛犬も一緒に歩けることから人気が高く、トレイルが閉鎖された翌月曜日も朝から大勢の観光客が訪れていました。今月いっぱいはポピーが楽しめるといわれており、まだしばらくポピー狂騒曲は終わりそうにありません。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)

オレンジ色のポピーに混ざって紫色の花もあります
オレンジ色のポピーに混ざって紫色の花もあります