「寿司」「ラーメン」「うどん」とアメリカで日本食はもはや珍しいものではなくなっていますが、55年前に一大ブームとなった日本食と言えば鉄板焼き。

- タマネギを使って作った火山に火をつけるパフォーマンスも
まだ日本食レストランがほとんどなかった1964年、マンハッタンにオープンした鉄板焼き専門店「紅花」は、オリエンタル調のインテリアを施した店内で大きな鉄板を囲んでシェフが目の前で器用にナイフとコテを操ってパフォーマンスをしながらステーキやエビを焼いてサービスするスタイルが受けて大成功。エキゾチックなエンターテインメント型レストランとして人気を博し、瞬く間に店舗が増えて全米のみならず世界で100店舗を超える一大日本食チェーンとなりました。システムはとてもシンプルで、メニューの中からステーキやチキン、サーモンやホタテ、ロブスターなどメインの食材を選ぶだけ。あとはセットでアペタイザーのエビと野菜焼き、炒飯にサラダとスープがついてきます。1つの鉄板を囲んで8人が座るスタイルで、シェフは同時に8人の客をもてなします。

- 広い店内にはいくつもの鉄板が並び、いつも大勢の人でにぎわっています
1号店がオープンしてから55年が経った今でも週末はどこの店舗も大混雑。ここロサンゼルス(LA)にも数店舗ありますが、予約をしないと座れないこともしばしばです。日本ではホテルの鉄板焼きレストランなど高級なイメージがありますが、ここはカジュアルな雰囲気で、家族連れや若者グループが大半で、誕生日会に利用する人もたくさんいます。鉄板を焼くシェフのほとんどは日本人ではなく、どこか怪しげな雰囲気と相まって、日本から来た日本人は「こんなの日本食じゃない」と思うかもしれませんが、これはこれでアメリカナイズされた日本食レストランとしてそれなりに楽しめます。

- レーザーを使ったパフォーマンスも

- 鉄板には8人分の異なる食材が並び、手際よく調理を進めていきます
店内には大きな鉄板が隣り合わせでいくつも並んでおり、シェフたちは手際よく野菜や肉を切り分け、時に隣のシェフとコショーを投げ合ったりしながら調理をしていきます。ここLAではラテン系のシェフが多く、片言の日本語を話しながら鉄板に並べられた食材を使って調理し、輪切りにしたタマネギを重ねて火山を作ってみたり、炒飯をハート型にまとめて鼓動を表現してみたりと様々なパフォーマンスを繰り広げて客を楽しませてくれます。エビのしっぽをヘラで投げてコック帽子でキャッチしたりする度に各テーブルでは大歓声が上がり、自然と隣に居合わせた客同士の会話も弾みます。

- サンタモニカ店は中心地ダウンタウンにあり、地下鉄の駅も目の前なので便利なロケーションにあります
そんな紅花を創業したのは、二昔前に「アメリカでもっとも有名な日本人」としてニューズウィークリー誌の表紙を飾ったこともあるロッキー青木氏。慶應義塾大学在学中にレスリングの日本代表として米国遠征に参加し、そのまま日本には帰国せずにアメリカに残ってニューヨークの大学でレストラン経営学を学んだ後、62年にニューヨークで移動式アイスクリーム店を開いて成功させたのをきっかけに、東京で洋食店「紅花」を経営していた両親を説得して家族で渡米して鉄板焼きレストラン「紅花」をニューヨークにオープンさせたのが始まりでした。パフォーマンスを取り入れたスタイルは物珍しさからマスコミにも注目され、後にヒルトンホテルの会長から直に出店依頼が舞い込むなど大成功を収め、青木氏は実業家としてその名を全米に知られるようになりました。店内には訪れた有名人と青木氏のツーショット写真がたくさん飾られており、いかに有名な日本人だったかがうかがえます。青木氏は08年に肝臓がんの合併症のために死去していますが、映画「ワイルド・スピード×2」(03年)や「シン・シティ」(05年)に出演していた女優デボン青木は、青木氏の娘です。

- 焼けた食材はすぐさま目の前の大皿へもってくれますので、焼きたての肉が楽しめます
肉は程よい焼き加減で、肉や野菜をディップする特性ジンジャーソースとガーリックバターを使った炒飯も人気です。アメリカでちょっと風変わりな異国情緒溢れる日本を感じてみるのも悪くないですよ。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)

