外務省が始めた日本の文化やアート、食、最新技術やテクノロジーを世界に向けて発信するプロジェクトのロサンゼルス(LA)の拠点となっているジャパン・ハウス・ロサンゼルスで、東北地方に受け継がれる祭りや郷土芸能をモチーフにした体験型アートインスタレーション「BAKERU:Transforming Spirits」展が開催されています。モーションキャプチャー技術を駆使したインタラクティブな同展は、日本の神秘的な伝統芸能の世界を実際に体験できるユニークな展示で、多くの観光客や地元の人たちが長年東北で受け継がれてきた郷土芸能を最新のデジタル技術を使って楽しんでいます。

子供や若者が喜びそうな人目を引く展示は、多くの人が東北に興味を持つきっかけになっています
子供や若者が喜びそうな人目を引く展示は、多くの人が東北に興味を持つきっかけになっています

ジャパン・ハウスとはブラジル・サンパウロと英国ロンドン、そしてここLAの世界3都市に設置された対外発信拠点で、親日家だけでなく、様々な世代の人たちに向けて日本の魅力を発信する役割を担っています。ここLAのジャパン・ハウスは、映画の都ハリウッドの中心にあるアカデミー賞授賞式の会場として知られるドルビー・シアターに隣接する複合施設「ハリウッド&ハイランド」内に2018年にグランドオープン。2フロアにまたがって、ギャラリーやレストラン、選りすぐりの日本製品を扱う店舗、ライブラリー、イベントスペースなどを備えた複合的な施設となっています。

お面をつけてスクリーンの前に立つとそれぞれの神の使いが現れて、体験者の動きに合わせて動き出します
お面をつけてスクリーンの前に立つとそれぞれの神の使いが現れて、体験者の動きに合わせて動き出します
「なまはげ」をモチーフにしたスクリーン
「なまはげ」をモチーフにしたスクリーン

「BAKERU(化ける)」と題された本展示は、秋田に伝わる大晦日に怠け者や悪さをする子供を探してやって来る仮面をつけて藁の衣装をまとった「なまはげ」、岩手と宮城県で受け継がれる伝統舞踊「鹿踊」、仙台市秋保地方に伝わる五穀豊穣を願う田植え踊りに登場する「早乙女」、山形に伝わる藁のミノを被って鳥の鳴き声を真似る伝統行事「加勢鳥」をモチーフにした4つのスクリーンの前で、お面をつけた来場者がそれぞれの「神の使い」の姿に化けることができるというものです。体の動きに合わせて神の使いに変身した自身のシルエットが動き、人々にもたらす恵みがアニメーションとして表現され、非日常の世界へといざなってくれるとてもユニークな展示になっています。

4つそれぞれのモチーフに合わせた動きを指示する表示があり、それぞれの郷土芸能の実際の動きを体験できます
4つそれぞれのモチーフに合わせた動きを指示する表示があり、それぞれの郷土芸能の実際の動きを体験できます

2011年に起きた東日本大震災で大きな被害を受けた東北は、多くの人がメディアなどでその名前を聞いたことはあっても、実際にどのような場所なのか、そこで受け継がれてきた伝統文化や祭りについて知っている人はあまり多くはないと思います。未だ震災の爪痕が残る場所が多く存在するだけでなく、過疎化や人口減少、高齢化など様々な問題を抱え、長年受け継がれてきた地域の祭りや伝統芸能の継承も危ぶまれるなど大きな問題を抱えています。

来場者は紙製のお面をかぶり、体験します
来場者は紙製のお面をかぶり、体験します

そんな東北の郷土芸能が「化ける」という行為を通じてデジタル映像で楽しめる本展は、日本の伝統芸能のことをまったく知らない若い世代でも楽しめ、東北地方について知る良いきっかけとなっているように感じます。筆者が実際に訪れた時も、様々な人種の人たちが、子供から大人まで一心不乱にスクリーンの前で体を動かし、神の使いに化けるという不思議な体験を楽しんでいました。

伝統工芸品の展示も
伝統工芸品の展示も
こけしや東北だるまができるまでの過程も分かりやすく展示されています
こけしや東北だるまができるまでの過程も分かりやすく展示されています

ギャラリーに隣接する店舗では、4つのそれぞれの郷土芸能が写真などで紹介されている他、東北に伝わる「こけし」や青い色が特徴の「東北だるま」、「かまどがみ」の木製の面など伝統工芸も展示されており、「東北」にクローズアップした展示は大盛況で、展示の延長も決まりました。

BAKERU展は10月20日まで開催中
BAKERU展は10月20日まで開催中

「化ける」展は10月20日まで、ハリウッド&ハイランドの2階にあるジャパン・ハウスのギャラリーで無料で楽しめます。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)