桜の木をモチーフにした美しいデコレーションの中で日本酒とシーフードのマリアージュを楽しむイベントが行われました
桜の木をモチーフにした美しいデコレーションの中で日本酒とシーフードのマリアージュを楽しむイベントが行われました

日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)とニューヨーク・タイムズ紙がタイアップし、日本酒の新たな魅力を現地の人たちに体感してもらう一夜限りの特別イベントがハリウッドでこのほど行われ、大盛況に終わりました。「エスケープ・ザ・オーディナリー」と題した今回のイベントのコンセプトは、シーフード料理と日本酒の相性の良さを発見し、体験してもらうこと。つまり、オーディナリー(平凡)から抜け出して、日本酒をあえて和食ではなく、洋食と合わせるという意外な発想と冒険で非日常を体験してみましょうというのが趣旨です。ロサンゼルス(LA)の人気レストラン「Son of A Gun」のシェフで料理界のアカデミー賞といわれるジェームズ・ビアード財団賞を受賞しているジョン・ショック氏とヴィニー・ドトロ氏よるコース料理と酒ソムリエがセレクトした日本酒のマリアージュを体験してきました。

テーブルにはグラスが4つセットされ、各料理に合わせてセレクトされた日本酒が注がれる形式で食事を楽しみます
テーブルにはグラスが4つセットされ、各料理に合わせてセレクトされた日本酒が注がれる形式で食事を楽しみます
シーザーサラダと日本酒の意外なマリアージュも体験
シーザーサラダと日本酒の意外なマリアージュも体験

アメリカでは「SAKE(発音はサキ)」の名で親しまれている日本酒の消費量は右肩上がりで増えていると言われていますが、ワインと比べるとまだまだハードルがあります。ひと昔前まではSAKEと言えば熱燗が中心でしたが、昨今のLAでは多くの人が寿司バーや日本食レストランで冷やで上質なお酒を気軽に楽しむようになってきましたが、まだまだ日本酒をワインのように家庭で食事に合わせて楽しむ人は少なく、あくまで日本食レストランで楽しむのが一般的。そんな日本酒を普段食べている料理と合わせることで、一歩日常から外れてみようというのが今回のイベントの最大の目的です。


前菜、サラダ、メイン、そしてデザートの4コースのディナーにペアリングするお酒をセレクトしたのは、ニューヨークやボストンで複数のレストランも共同経営する酒ソムリエのナンシー・クッシュマンさん。日本という枠組みから離れて、日本酒とシーフードの相性の良さを体験して欲しいと語るクッシュマンさんが選んだ5種類の日本酒と料理を、招待された地元のフードライターやインフルエンサー、食品関係の人たち約50人が楽しみました。桜の木が飾られた会場は「和」を感じさせる一方、出された料理はどれも日本食とはまったくかけ離れたものばかりで、その絶妙なバランスが非日常感を上手く演出しています。日本酒はうま味成分を圧倒的に多く含んでおり、そのうま味がシーフードの美味しさを増幅することやワインと違って鉄分や酸化防止剤を含んでいないためシーフードの生臭さを消すことなどが説明された後、いよいよディナーの始まりです。

見た目の色彩も美しいマグロとアボカドの前菜は、スッキリとさわやかな純米吟醸に良くマッチします
見た目の色彩も美しいマグロとアボカドの前菜は、スッキリとさわやかな純米吟醸に良くマッチします
メインのマス料理には旨味をより感じられるお酒がセレクト
メインのマス料理には旨味をより感じられるお酒がセレクト
デザートのフローズンヨーグルトとにごり泡のマッチングは最強です
デザートのフローズンヨーグルトとにごり泡のマッチングは最強です

食事の前のカクテルパーティーでは、ウエルカムドリンクとして食前酒にぴったりな発泡酒「澪スパークリング」が振る舞われましたが、ディナーではキハダマグロとアボカドの前菜に合わせて最初に出されたのは山形県の「出羽桜 純米吟醸酒」。次に出された2品目はなんとシーザーサラダに兵庫県の「香住鶴 生■(きもと)辛口」を合わせる驚きのペアリングを初体験。ソースの酸味と辛口日本酒が意外なほど合うので驚きました。そしてメインのフランスの伝統料理マスのアマンディーヌには、栃木県の「天鷹 国造 特別純米」がペアリングされました。お酒の旨味とレモンの酸味が効いたマスとの相性は抜群です。そしてシメのデザート、フローズンライムヨーグルトに合わせて出されたのは自然の甘みが調和する「白川郷 泡にごり酒」でした。アメリカでは珍しいにごり酒でしかもスパークリングということで、これには多くの参加者たちが感動していました。

桜の木が「和」を演出する会場におよそ50人のアメリカ人が招待され、日本酒とシーフードを堪能
桜の木が「和」を演出する会場におよそ50人のアメリカ人が招待され、日本酒とシーフードを堪能

日本酒と洋食という意外な組み合わせは正直驚きと新発見の連続でした。ワイン大国カリフォルニアに住んでいるとシーザーサラダや洋食にはワインというのが定番でしたが、こんなペアリングもありなんだ! と改めて実感。日本酒の奥の深さに多くの参加者が感銘を受けたであろう今回のイベントは、すでにニューヨーク、サンフランシスコでも開催されており、LAがトリの3都市目となりましたが、より多くのアメリカの方々に日本酒の魅力を伝えらたのではないでしょうか。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)

※■=酉ヘンに元