今年もクリスマス商戦の本格的な幕開けとなるブラックフライデーの季節がやってきました。ブラックフライデーとは、毎年11月の第4木曜日のサンクスギビング(感謝祭)の翌日に行われる一大セールです。

今年のブラックフライデーは29日です
今年のブラックフライデーは29日です

大手量販店やショッピングモールなどは日付が変わると同時の午前0時に開店し、目玉商品を求める人たちが毎年数日前から店の前にテントを張って寝泊まりするなどこの時期の風物詩となっています。多くの小売業者にとってブラックフライデーからクリスマスにかけては年間の売り上げを左右する勝負時のため、大幅な値下げ競争が繰り広げられますが、近年はオンライン購入者のための「サイバーマンデー(感謝祭の次の月曜日のオンラインセール)」も激化しており、米国では感謝祭翌日の金曜日から月曜日までの4日間で87億ドルの消費が見込まれています。

70%オフなど消費者の購買欲をかき立てる看板が並びます
70%オフなど消費者の購買欲をかき立てる看板が並びます

一方で、このような大規模セールの実施による従業員の負担や大量消費に異議を唱える企業も増えており、一部小売店では「ブラックフライデーを行わない」とボイコット宣言する動きも出ています。人気スキンケアブランド「The Ordinary」を傘下に持つビューティーブランドDECIEM(デシエム)は、今年のブラックフライデーは全店舗を休業とし、同社のウェブサイトも同日は閉鎖することを発表。「ブラックフライデーの大量消費は地球にとって脅威の1つになっています。消費者に考える余地を与えずに購入させ、売り切れに対する恐怖心を与えるようなセールは辞めます。ブラックフライデーは地球にも消費者にもフレンドリーなイベントにすべきです」と広報担当者は語り、同社では世界中の店舗とオンラインで12月いっぱいセールを実施することを発表しています。

また、シアトルに本拠地を構える大型アウトドアショップREI(アール・イー・アイ)は過去5年間にわたってブラックフライデーは休店としており、今年もオンラインストアも含めて全店舗で閉店することを公表。従業員や消費者に、(大量消費による)環境への影響を考える運動に参加して欲しいと呼び掛けています。

ブラックフライデーは深夜からスタートし、翌日夜まで一日中大勢の買い物客でにぎわいます
ブラックフライデーは深夜からスタートし、翌日夜まで一日中大勢の買い物客でにぎわいます

一方で、ブラックフライデーを社会貢献に役立てようとする企業も増えています。環境問題に取り組む姿勢が評価されているアウトドアブランド「パタゴニア」は、ホリデーシーズンの買い物をする代わりにパタゴニアが支援する1000の環境保護団体への寄付を呼び掛けています。また、同社はホリデーシーズン中の売り上げの一部をこうした慈善団体に寄付することも公表しています。また、衣料品店Everlane(エヴァーレーン)は、ブラックフライデーの売り上げの一部を使い捨てプラスチックの生産廃止に取り組む慈善活動に寄付すると発表し、今年は30万ドルの寄付を目標に掲げています。また、ファション小売店「Olivela(オリヴェラ)」は、ホリデーシーズンの売り上げから100万ドルをセント・ジュード小児研究病院などに寄付することを発表し、ファストファッション・ブランド「オールド・ネイビー」も1ドルの靴下が1足売れるごとに1ドルを青少年に放課後の活動プログラムを提供する非営利団体ボーイズ・アンド・ガールズ・クラブに寄付することを表明しています。

ブラックフライデーは小売店にとって1年でもっとも売り上げが見込める日として知られています
ブラックフライデーは小売店にとって1年でもっとも売り上げが見込める日として知られています

今年のブラックフライデーは29日ですが、持続可能で地球環境に優しいエコが叫ばれる今の時代には消費者の購買欲をかき立てて翌年にはゴミとなるような物を大量に買わせるセールは不要になってきているのかもしれません。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)