新型コロナウイルスによる死者が15万人を超えたアメリカでは、2度目のロックダウンも議論され始めるほど状況は深刻化しています。ここカリフォルニア州も例外ではなく、1日の新規感染者数や死者数が過去最悪を更新し続けており、特に「ホットスポット」と呼ばれる感染拡大地となっているロサンゼルス(LA)では、7月に入ってから50歳以下の感染者が急増しています。段階的に経済活動が再開された5月中旬以降、30~49歳の感染者の割合が最も多いと伝えられており、経済活動再開と共に若い世代での感染が顕著となっています。夏休みまっ最中の7月下旬のサンタモニカに出かけてみると、平日の昼間にも関わらずビーチで日光浴や海水浴をしたり、買い物や飲食を楽しむ人で賑わっており、野外飲食が認められているレストランではお酒を飲みながら騒ぐ若者グループの姿も多く見られ、コロナ禍以前と変わらない光景が広がっています。

ほぼ毎日晴天のLAではパティオ席での飲食は気持ちがよく開放感があります
ほぼ毎日晴天のLAではパティオ席での飲食は気持ちがよく開放感があります
ショッピングモールの立体駐車場内にテーブルとイスを並べて飲食スペースとして開放するショッピングモールに関するツイート
ショッピングモールの立体駐車場内にテーブルとイスを並べて飲食スペースとして開放するショッピングモールに関するツイート

そんな中、再度の厳しい外出制限を行うべきだとの批判にさらされているカリフォルニアでは、感染拡大を抑えつつ経済活動を続けるための「ニューノーマル」と呼ばれる新たな日常も定着しつつあります。LAの新たな日常とはどのようなものなのか、ニューノーマル時代の生活を紹介します。

サンタモニカの野外ショッピングモール「サンタモニカプレイス」の屋上にあるフードコートは、ソーシャルディスタンスを保った座席配置で開放的な空間に
サンタモニカの野外ショッピングモール「サンタモニカプレイス」の屋上にあるフードコートは、ソーシャルディスタンスを保った座席配置で開放的な空間に

●飲食は野外で

一度は再開が認められた飲食店も感染が再び拡大したことから、店内での飲食は再び全面禁止となったLA。現在は屋外の席のみ営業が認めらており、多くの飲食店が歩道や駐車場の一部にテーブルや椅子を並べて営業を続けています。年間を通じてほとんど雨の降らないLAならではのアイディアですが、これからの季節は外で飲食するには最高の季節なので、野外での飲食がスタンダードになっていきそうです。駐車場に巨大なテントを設営したり、改装して新たにパティオ席を作る飲食店もある一方で、野外席を作るのが難しい屋内ショッピングモールでは立体駐車場の一部をフードコートの飲食スペースにする動きも出ています。買い物客の車が行き交う駐車場で食事をするというのも落ち着かない気もしますが、オンラインオーダーした食べ物をカーブサイドでピックアップして駐車場で食べるのもニューノーマルな光景になってくるのかもしれません。

マクドナルドではタッチパネルで商品の注文ができます
マクドナルドではタッチパネルで商品の注文ができます

●非接触サービスが当たり前に

オンラインで商品を注文し、店頭や駐車場で荷物を受け取ることができる「カーブサイドピックアップ」は、パンデミック以降かなり浸透しています。小売店だけでなく、ショッピングモールやデパート、スーパーマーケットからペットストア、レストランのテイクアウトまで今では多くの店でカーブサイドピックアップを導入しており、ほとんど人と接触することなく買い物ができます。新鮮な野菜が買えると地元で人気の日系3世が経営する農園タナカ・ファームでも、車に乗ったまま買い物ができるドライブスルーによる野菜の直売所をスタートさせて人気です。

また、レストランでも接触を減らすための様々な取り組みが行われており、QRコードを利用したメニューや店の入口でQRコードを読み込んで座席を予約して準備ができたら携帯電話に知らせが来るサービスなども登場しています。マクドナルドなどファストフードチェーンでは店員と接触することなく、タッチパネルで注文できるシステムも導入されており、ウィズコロナの時代は非接触サービスが必須となってきそうです。

QRコードを利用したメニューや座席の予約は多くのレストランで導入が始まっています
QRコードを利用したメニューや座席の予約は多くのレストランで導入が始まっています

●ノーマスク、ノーサービス

マスク着用を義務化する動きは加速しており、大手量販チェーンのウォルマートやホームセンターのホームデポ、ドラッグストアのCVSやウォルグリーン、アップルストアなど大手チェーン店が全米の全ての店舗でのマスク着用義務化を発表。マスクを着用していない客の入店やサービス提供を断る動きが広がっています。LAでは買い物時や飲食店への入店時もマスク着用は必須ですが、サンタモニカやウエストハリウッドなど一部地域では公の場でのマスク着用を義務化しており、違反者には罰金を科す動きも広がっています。

ノーマスク、ノーサービスはウィズコロナ時代のニューノーマルに
ノーマスク、ノーサービスはウィズコロナ時代のニューノーマルに

●映画鑑賞やコンサートはドライブイン?!

3月中旬から全米で映画館が閉鎖され、現在も多くの州で閉鎖されたままですが、代わりに60年代に大流行したドライブイン・シアターが再び脚光を浴びています。現在残っている数少ないドライブイン・シアターはどこも大盛況で、新たなカルチャーとなっているだけでなく、LAのロウズボウル・スタジアムでは期間限定で週末にドライブイン・シアターがオープンするなど、ソーシャルディスタンスを確保しながら映画を楽しむ新たなツールとなりつつあるようです。

また、大型イベントの開催も未だできない状況の中、ソーシャルディスタンスを保ちながらコンサートを楽しめる企画として、米大手コンサート・プロモーターのライブ・ネイションが、米国内で初のドライブ・イン・コンサートをテネシー州ナッシュビルなどで開催。巨大な駐車場にステージを設置し、観客は隣の車と2台分のスペースを空けた駐車スペースに車を停めて車中や車の外に椅子をおいてプライベート空間を保ちながらコンサートが楽しめるとあって大盛況だったようです。

ドライブスルーの野菜や果物の直営販売は地元でも大人気
ドライブスルーの野菜や果物の直営販売は地元でも大人気

●野球観戦は自宅で球場の雰囲気を感じながらテレビ観戦

24日には待ちに待った大リーグが開幕しましたが、もちろん今年は球場に足を運んで応援することはできません。しかし、球場に応援に行った気分にさせてくれるアイテムも色々考案されています。LAドジャースでは無観客のスタンドに自分の写真パネルを設置できるサービスを行っており、ダグアウトやホームランシートは299ドル、フィールドは149ドルで購入が可能。写真はオンラインでアップロードでき、人間だけでなく、愛犬や猫もスタジアムの席に座らせることができるペット席もあります。

また、ドジャー・スタジアム名物の「ドジャードッグ」と呼ばれるホットドッグやチームカラーのブルーのヘルメットに入ったフレンチフライなど球場でいつも食べていたフードを自宅にデリバリーしてもらえる「LAドジャース・ホームプレイト」と題したサービスも開始。アプリやオンラインからオーダーができ、自宅でドジャードッグ片手にテレビ観戦し、運が良ければテレビ画面に自分のパネルが映し出される可能性もあります。

フードデリバリーアプリでドジャードッグも注文ができるように
フードデリバリーアプリでドジャードッグも注文ができるように

●学校はオンラインと対面のハイブリッド化?!

全米で2番目に生徒数の多いLAの公立学校では来月から始まる新学期も対面授業は行わずにオンライン授業を継続することを発表。一方で、南部オレンジ郡ではオンライン授業の継続には批判的な立場を表明しており、対面授業の再開を求めてカリフォルニア州知事を提訴しています。また、私立学校や一部地域ではオンラインと対面授業を織り交ぜたハイブリッド方式を導入することを発表しており、ソーシャルディスタンス確保のために1度に登校する生徒数を減らして交代制で週に数時間登校しながら残りはオンライン授業とするハイブリッド教育がニューノーマルになるのではと言われています。また、同級生の保護者や近所の人たちで協力し合ってフルタイムの家庭教師を雇い、自宅に少人数で子供たちを集めて授業を行ってもらうホームスクールも増えているそうです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)