日本でも新型コロナウイルス感染の急激な増加で札幌や大阪が「Go To トラベル」の対象地域から一時除外されることが決まりましたが、ここアメリカでも明日26日から始まる4連休を前に「移動の自粛」「旅行計画の取りやめ」が求められています。これまでの経験上、新型コロナウイルスは人の動きに伴って拡大することが分かっており、コロナ疲れや慣れによる気の緩み、気温の低下や旅行や外出など人の移動の増加が第3波の要因になっていると指摘されています。そんな中、感謝祭の休暇を前に全米各地の空港や駅では帰省客や旅行者が急増していることを踏まえ、「自分だけでなく、家族や友人ら大切な人の命を守るために自宅にとどまることが最善の方法」と米疾病対策センター(CDC)は指針を出し、全国民に対して今年の感謝祭は実家への帰省や旅行、不要不急の移動はしないよう呼び掛けています。

LAでは2度目のロックダウンの可能性が現実味を帯びています
LAでは2度目のロックダウンの可能性が現実味を帯びています

アメリカでは18日に新型コロナウイルスによる死者数が25万人を超え、累計の感染者数も現時点で世界最多の1259万人を記録。11月に入ってからは全米各地で感染が急増しており、このまま対策を行わなければクリスマスまでに医療崩壊が起きてパンデミック当初のニューヨークやイタリアのような惨事が各地で起こりかねないと懸念されています。それでも、全米自動車協会によると今年の感謝祭の連休もおよそ4800万人が幹線道路を利用すると予想されているほか、35万人が列車を利用する予定だといいます。昨年より10%ほどの減少が見込まれていますが、期待されたほどの自粛は見られないようです。また、飛行機の利用者も昨年の同時期に比べて減少しているものの、22日だけで全米の空港で91万人を超える人が保安検査場を通過したと伝えられています。23日にパンデミックが始まって以来最多となる1日の新規感染者数が6124人を記録したここロサンゼルス(LA)でも、ここ数日は渋滞が目立ち、空港でも若干の混雑が見られることからコロナ禍でも多くの人が移動していることが分かります。

連休で多くの人出が予想され、さらなる感染拡大が懸念されています
連休で多くの人出が予想され、さらなる感染拡大が懸念されています

家族が一堂に集まって食事をしながら多くの恵みに感謝を捧げる感謝祭は、日本の正月のような大切な家族行事であることから、これだけ危険性が指摘されてもなお「それでも集まる価値がある」と考えている人が多いと言われています。そんな国民に向けて、大統領選で勝利を確実にしたバイデン前副大統領は感謝祭の前日に、「私たちはいま、ウイルスとの戦争の真っただ中にいます。私たち一人ひとりが感染拡大を遅らせるためにできることをする責任があります。私たちが下す全ての決断で命を救うことができます」と改めて感染拡大を防ぐための行動を呼びかけ、この状況が一生続くわけではないので今一度の我慢をと訴えています。

飲食店での屋外飲食が再び禁止となり、感謝祭を前に多くの失業者が出ることになってしまいました
飲食店での屋外飲食が再び禁止となり、感謝祭を前に多くの失業者が出ることになってしまいました

アクセルを踏みながらブレーキをかけることができないように経済活動と感染拡大の両立は難しいのが現実で、LAでは先週末から始まった夜10時から翌朝5時までの不要不急の外出禁止令に加えて新たに25日午後10時から最低3週間にわたる飲食店やブリュワリー、ワイナリーの営業停止を決定。これによって屋外でのみ営業が認められていた飲食店やバーは明日から一斉に閉鎖となり、テイクアウトとデリバリー、ドライブスルーのみの営業に逆戻りすることとなります。LAはすでにロックダウンの基準とされた直近5日間の新規感染者の平均4500人を超えており、地元メディアによると現在の状況は145人に1人が無症状感染者と推定されるといいます。

コロナ禍でも大勢の人が家族らと共に感謝祭の食事会を行うと予想されています
コロナ禍でも大勢の人が家族らと共に感謝祭の食事会を行うと予想されています

いつロックダウンが発令されてもおかしくない現状の中、今日から州外や国外からLAを訪れる人に対して2週間の自己隔離を徹底するため、市内の空港2カ所と鉄道の駅ユニオンステーションに到着した人は住民も含めて全員がカリフォルニア州公衆衛生当局の要請を理解して従うことに同意したことを示すオンラインフォームの提出を義務付け、提出を怠ると500ドルの罰金刑になることも発表されています。カリフォルニア州では必要不可欠な仕事に従事する医療関係者などを除き、国外・州外から到着した人には14日間の自己隔離を求めていますが、当局は旅行などレジャー目的での移動や不要不急と見なされる移動は行わないよう推奨しています。

ロサンゼルス空港もコロナ禍が始まって以来となる混雑が見られます
ロサンゼルス空港もコロナ禍が始まって以来となる混雑が見られます

地獄のようなクリスマスを迎えることにならないため、コロナ疲れに負けずにしばし移動の自由と家族と一緒に過ごす時間を我慢することが求められています。

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)