日本でもようやく新型コロナワクチンの接種が進みつつありますが、すでに人口の45%が接種を完了しているアメリカでは各地でコロナ禍以前の日常生活を取り戻しつつあります。現在接種対象となっている12歳以上では52.6%が2回の接種を終えているアメリカから、接種に際しての注意点や知っておくべき情報をまとめてお届けします。新しいワクチンなのでさまざまな偽情報がSNS等で拡散されていますが、こうした情報に惑わされないためにも自分の接種の順番が来た時の参考にしてみてください。

アメリカでは薬局で簡単にワクチンの接種ができます
アメリカでは薬局で簡単にワクチンの接種ができます

Qワクチンは2回接種しないとダメ?

日本で現在承認されているファイザー社とモデルナ社のワクチンは、共に2回接種する必要があります。ファイザー社は1回目の接種から3週間後、モデルナ社は4週間後に2回目を接種することになっていますが、数日の誤差は問題がないとされています。1回の接種だけでは予防効果を得るための十分な抗体を作れない可能性があり、できる限り定められた期間内に2回目の接種をすることが推奨されています。一部の国では、1回目と2回目に異なる種類のワクチンを接種することが認められていますが、日本では同じワクチンの接種を受けるよう厚生労働省が指示しています。

Qワクチン接種後は感染しない?

ワクチンは新型コロナウイルス感染症の発症を予防するものであり、感染を100%防ぐことは残念ながらできないと言われています。ワクチン接種完了後に感染する「ブレイクスルー感染」がすでにメディアでも報じられていますが、ワクチン接種後も適切な感染予防を行わない場合は感染する可能性があります。ただ、両ワクチンとも発症予防効果は95%(モデルナは94%)と報告されているため、例え感染しても発症したり、重症化する確率は低くなります。

一方、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、ワクチン接種後に十分な抗体ができるまで2週間程度かかるため、この期間は自身が感染したり、他人にうつす可能性もあるとしています。接種後も当面は、マスク着用やソーシャルディスタンスの確保など感染予防を心がける必要があります。

Qファイザーとモデルナの違いは? ワクチン接種で感染する?

両ワクチンともメッセンジャーRNA(mRNA)という遺伝子物質を投与する仕組みで、予防効果もほとんど変わらないといわれています。一方で個人差はあるものの副作用には若干の違いが見られ、「モデルナ・アーム」と呼ばれる接種箇所が赤く腫れる副作用や筋肉痛がモデルナの方が起こりやすいといわれています。

ワクチンにはコロナの感染を引き起こすウイルスは含まれておらず、mRNAをもとに体内でウイルスのたんぱく質が作られて免疫がつくシステムになっているため、ワクチンの接種で感染することはありません。

CDCのガイドラインに従い、ワクチン接種を完了した人は店舗でのマスク着用義務化がなくなりました
CDCのガイドラインに従い、ワクチン接種を完了した人は店舗でのマスク着用義務化がなくなりました

Qコロナに1度感染した人もワクチン接種すべき?

CDCはコロナに感染して回復した人もワクチンを接種すべきだとしています。理由は、感染後に抗体がどれだけの期間持続するのか分かっておらず、まれではあるものの2度感染した例も報告されているからです。

ただ、陽性反応が出た直後や症状のある人はワクチン接種を受けることができません。回復するまで待つ必要があります。接種のタイミングについては医師の助言を仰ぐと良いでしょう。

Qワクチン接種後の副作用は?

個人差がありますが、CDCでは一般的に接種した箇所の痛みや腫れ、発赤のほか頭痛や倦怠感、発熱、悪寒、筋肉痛、吐き気などの副作用がある可能性をあげています。腕の痛みは接種直後から数時間後、その他の副作用に関しても数時間から半日後くらいに現れはじめ、数日以内に回復するとされています。一般的に1回目よりも2回目の方が重い副作用が出るといわれていますが、これも個人差があり、筆者の周囲でも1回目の方が重い副作用があり、2回目はほとんど何もなかったという人も何人かいます。また、数日間調子が悪かったという人がいる一方で接種箇所の軽い痛み以外まったく副作用がなかった人もおり、接種した全員が重い副作用を経験しているわけではありません。副作用に関しては個人差がかなり大きいことが分かっているので、あまり他人の経験談に過敏に反応する必要はないでしょう。

Q長期的な副作用は?

ワクチン接種直後の副作用は正常な反応でワクチンが効果を表していることを示していますが、長期間にわたってその副作用が続くことはほとんどありません。また、日本ではまだ承認されていないジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチンでは、まれに接種後の女性に血栓症を発症するリスクがあることが報告されているほか、ファイザーを接種した若い男性に心筋炎が想定以上に多いことがCDCの暫定調査で分かっています。一方、過去の事例からまれに発生する重篤な副作用は接種後2カ月以内に起きることが多いことも分かっており、接種後はしばらく健康観察をこまめにすると安心でしょう。

一方、CDCはワクチン接種が原因で不妊症になることはないとしているほか、最新の研究調査で健康な男性の精子の数がワクチン接種後に減少することがないことも分かっており、副作用として生殖能力が損傷されることはないようです。

QワクチンでDNAが書き換えられるって本当?

SNSでそうした情報が拡散されていますが、DNAが書き換えられることはないとCDCは発表しています。また、マイクロチップを埋め込み監視するためだという情報も陰謀論です。

ロサンゼルスでは予約なしでもワクチンが受けられるようになっています
ロサンゼルスでは予約なしでもワクチンが受けられるようになっています

Q接種に際して気を付けること

接種前後はアルコールを控え、睡眠を十分にとるなど免疫力を上げておくことも大切です。接種後は副作用がでる可能性もあるので、当日は早めに就寝するなど体を休めることも重要です。可能なら休みの前日に接種したり、仕事が忙しい時期を避ける等するのも一つの方法です。また、接種した腕の痛みで仕事や日常生活に支障をきたす可能性もあるため、利き腕ではない方の腕に接種することが推奨されています。

アレルギーがある人や免疫機能の低下している人もワクチンを接種することはできますが、事前に医師と相談することをおすすめします。

Q副作用を軽減するためにできることは?

アメリカでは接種後は脱水症状になりやすいことから接種前後に十分な水分補給をするよう推奨する医師が多いようです。CDCも発熱に備えて十分な水分補給や、体を締め付けない楽な服装を推奨しています。また、接種箇所の痛みや腫れを軽減させるため、接種箇所を冷やしたり、接種した方の腕を動かしたり、軽くマッサージをすると良いとアドバイスしています。

一方、接種後に発熱や頭痛などがある場合は市販の解熱鎮痛剤の服用を認めていますが、接種前に副作用を抑える目的で服用することは抗体形成を弱める可能性があるため推奨していません。

Q接種後はマスク着用など感染予防はいらなくなる?

CDCは、接種後2週間が経過して免疫ができた人は、ソーシャルディスタンスの確保や公共交通機関や飛行機など不特定多数の人で混雑する屋内や病院、介護施設等を除きマスク着用の必要はないとの新たなガイドラインを発表しています。接種後は他人にうつす可能性も少ないとされていますが、ワクチン接種を終えてない人も多く集まる場では当面の間は感染予防をしっかりする方が安心です。また、現在のところワクチンの効果がどの程度続くのかは分かっていないので、接種後も引き続き手洗いなど基本的な感染予防は続けることが望ましいでしょう。

アメリカではすでに昨年末から今年初めに接種を終えた人を対象に3回目のブースター(追加免疫)接種の臨床試験もスタートしており、今後はインフルエンザワクチンのように定期的な接種が必要となる可能性も指摘されています。

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)