デルタ株猛威　ＬＡでワクチン接種証明義務化の動きも、反発必至

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変異種「デルタ株」の蔓延（まんえん）によって新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないアメリカ。ワクチン接種が進むここカリフォルニア州も例外ではありません。最大の都市ロサンゼルス（LA）でも、今月に入ってから悪化の一途をたどっており、28日には1日の新規感染者が3200人を超え、入院患者数も1000人に迫る勢いを見せています。そんな中、ついにニューサム知事が、すべての州職員や医療従事者に対してワクチン接種完了の証明または定期的な検査での陰性証明を求める公衆衛生の命令を出す方針を発表しました。全面的な経済活動を再開させた6月中旬時点では1000人未満だった感染者数がわずか1カ月半ほどで7000人を超えたことで、新たな対策を打ち出す必要性に迫られていました。こうした動きは行政だけでなく、飲食業界にも広がりつつあり、サンフランシスコのバー協会は店内で飲食を希望する客に対してワクチン接種の証明か72時間以内の陰性証明を求めることを29日に発表しています。LAでも屋内でのマスク着用が再び義務化されるなど、各自治体はデルタ株からいかに住民を守るのか対応に追われています。

: CDCの発表を受け、LAでは屋外でも再びマスクを着用する人が増えてきました

カリフォルニア州の職員数は24万6000人と発表されており、ワクチンを接種していない人は少なくとも週1回のペースで検査が必要となります。民主党支持者が多いカリフォルニアは、共和党員が多い中部や南部の州よりもワクチン接種に拒否感を持つ人は少ないとされるものの、義務化への反発は今後出てくる可能性はあります。テキサス州ヒューストンでは、病院に勤務する職員にワクチン接種を義務付ける措置を発表した後、反発した職員らが「接種するかしないか選択する権利がある」として接種拒否を理由に解雇するのは不当だと病院を訴えたケースもあり、義務化への壁はまだまだ高いのが現実。今後はカリフォルニア州でも、接種完了者と未接種者の間で軋轢（あつれき）が生じることが懸念されます。

そんな折、LA南部の都市ハンティントンビーチにあるレストランが、客に対して「ワクチン未接種であることの証明を求める」と告知し、論争を巻き起こしています。イタリア料理店のオーナーは、SNSに「告知：ワクチンを接種していない証明を求める。当店は背信的、反米的な愚行を一切容認しない」とのメッセージを投稿。店頭にも同じビラが貼られており、それを見た人たちから批判の声が殺到。SNSも大炎上し、抗議の電話も鳴りやまない状況だといいますが、店側は強気で反論を続けています。NBCテレビの取材にオーナーは、「我々アメリカ人の生き方が攻撃を受けている。私はリスクを顧みず、権利と自由を守るために最前列で戦いに挑んでいる」とコメント。昨年3月に実施されたロックダウンやマスク着用義務化などの感染予防対策も批判しており、「かかってこい！」と挑発しています。

: 新型コロナワクチン未接種の証明を求める張り紙をするレストラン（写真はレストランのインスタより）

急増する感染者の多くはワクチン未接種者だといわれる一方、デルタ株の蔓延に伴ってワクチン接種を完了していても感染する「ブレークスルー感染」も多く報告され始めています。LA郡では6月の新規感染者のおよそ2割がブレークスルー感染だったことを発表しており、重症化や死亡率は低くなるものの完全に感染を防ぐことは難しいことが露呈しています。そんな中で、デルタ株に関する米疾病対策センター（CDC）の内部資料がメディアにリークされ、その驚くべき内容が衝撃を与えています。報道によると、未発表の資料にはデルタ株はエボラや天然痘よりも感染力が強く、水疱と同じくらい容易に蔓延することが記されているといいます。また、ワクチン接種を完了した人でも未接種者と同程度の割合で感染を広げる可能性もあるとしており、CDCのワレンスキー所長はこれが本物であることを認めています。

CDCはこれに先立って、これまでワクチン接種完了者は着用の必要はないとしていたマスクについて屋外での着用を勧めることや濃厚接触者の隔離や検査を不要としていたことについても方針を転換させています。資料では、変異前のウイルスは通常の風邪と同程度の感染力だったものの、デルタ株は1人の感染者が平均8～9人に感染させる可能性があるとしており、ワクチン接種のみの対策では不十分であることが改めて明るみに出てきました。東京オリンピックに出場する選手たちもワクチン接種をしていたにも関わらず検査で陽性反応が出るケースが多くみられることも、この資料の内容を裏付けるものとなっています。