Sake(日本酒)は英語でサキ(英語の発音ではサケではなく、サキに近い)”として親しまれ、市民権を獲得しているアメリカですが、焼酎の知名度は今一つ。アジア系住民が多いここロサンゼルス(LA)でさえ、まだまだ焼酎を知っている人はごく一部というのが現状です。

一方、全米最大のコリアタウンを有するLAでは韓国焼酎「Soju(ソジュ)」の人気は高く、“Shochu(焼酎)”と区別がつかない人も多くいます。そんなLAで、日本の本格焼酎造りを始め、「SoCal Shochu」というブランドを立ち上げたアメリカ人がいます。

南カリフォルニア初のクラフト焼酎ブランドを立ち上げたのは、ミズーリ州の農場で生まれ育ち、自営蒸留所を営む家族の元で、5歳の頃から自家製ワイン造りのためのブドウ踏みを手伝うなど、幼い頃から酒造りの現場を間近で見て育った生粋の醸造家ジョン・ブローカーさんです。

LA発の焼酎SoCal Shochuは、アルコール度数17%と、ウォッカのような度数の高い40%の2種類で展開
LA発の焼酎SoCal Shochuは、アルコール度数17%と、ウォッカのような度数の高い40%の2種類で展開

実家のブラックスミス蒸留所は、農園で採れた自家製コーンを使ったコーンウイスキーを造るなど代々受け継がれてきたオリジナルレシピでウイスキーやバーボン、ジンを造っており、ブローカーさん自身も移り住んだLAで最初にジン造りを始め、ベスト・コンテンポラリー・ジン・イン・アメリカなど様々な賞を受賞しています。

そんなブローカーさんが、焼酎造りをスタートさせたのは昨秋のこと。日本でも近年注目されている酒粕焼酎を商品化して、すぐエントリーしたインターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティションで銀賞を受賞し、6月から本格販売もスタートさせました。

「商品開発から半年ほどでの受賞はとても重要な意味があります」と話すブローカーさんですが、焼酎部門では3年ぶり、日本人以外では7年ぶり3回目の受賞となりました。そんなブローカーさんに、焼酎の魅力やなぜ焼酎造りを始めたのか話を聞いてみました。

醸造家ブローカーさん(左)と共同オーナーのジョヴァンニさん
醸造家ブローカーさん(左)と共同オーナーのジョヴァンニさん

「LAに住んで20年になりますが、縁があってバーバンク(LA北部)でワイナリー、アーバン・プレスを営むジョヴァンニ氏と出会い、一緒にアーバン・プレス・スピリッツを立ち上げました。もともと、ビール醸造所だった場所を買い取り、そこでジン造りを始めたのがスタートです」

スピリッツの世界で権威のある賞を取り、大手リカーストアでの販売も決まるなど注目を集めるSoCal Shochuを造り始めたきっかけは、自身の蒸留所の近くで日本酒造りをしているノバ・ブリューイングに「コラボしましょう」とアプローチしたことがきっかけだったといいます。

「ノバでは酒造りの後に残った酒粕を冷蔵庫に保管していました。その酒粕で焼酎造りができないかと思ったんです。最初に黒麹の粕をブレンドして蒸留しましたが、強すぎて雑味があり、次に黄麹で試してみたところとても良い感じになりました。この酒粕で2種類の焼酎を造り、商品化したのが今回発売したレッドとブラックです。酒造りの過程で残った粕を使っているため食品廃棄物を一切出していないのでエコで、かつ地元企業とのコラボという点も気に入っています」

ブローカーさんの造るジンAFFINITYも高い評価を受けており、赤ラベルのSoCal Shochuもコンペで銀賞を受賞しています
ブローカーさんの造るジンAFFINITYも高い評価を受けており、赤ラベルのSoCal Shochuもコンペで銀賞を受賞しています

一方で、焼酎がなかなかアメリカ人に浸透しない理由については、「種類が多すぎて分かりにくい」と話します。「様々な銘柄の焼酎を試飲してきましたが、芋、米、麦、黒糖・・・と種類が多いことが普及しない理由の1つだと思います。それぞれ特徴がありますが、それが逆に複雑でネックにもなっていると思います。今、アメリカではカクテルブームで多くのミクソロジストが出現して新しく珍しい材料を探し求めているので、焼酎にもチャンスがあります。ミズーリの田舎出身のファームボーイが造った焼酎というのは、ストーリーとして面白いのでSNSを活用して宣伝していけば広がっていくと思います。焼酎と言ってもアメリカ人にはピンとこないので、日本版ウォッカと表現するのが一番分かりやすく、ストレートで飲んでも割ってカクテルにしてもおいしいジャパニーズ・ウォッカ「焼酎」の魅力を発信していければと思っています」

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)