11月最終木曜日のサンクスギビングデー(感謝祭)が終わり、今年もホリデーショッピングの季節がやってきました。

アメリカでは感謝祭の翌日が1年で最もお得に買い物ができる一大セールス日「ブラックフライデー」として知られ、その翌日は地元の個人商店で買い物して支援する「スモールビジネスサタデー」、そして翌週月曜日は大規模オンラインセール「サイバーマンデー」とセール三昧の日々が続きます。

ブラックフライデーは半額以下になる商品も多く、お宝探し気分で買い物が楽しめます
ブラックフライデーは半額以下になる商品も多く、お宝探し気分で買い物が楽しめます

新型コロナウイルス感染拡大の影響でこの2年ほどは、混雑を避けるためセールを前倒して行う傾向があり、街中では11月上旬から「SALE」の看板が目立っていましたが、それでも大幅な値引きが期待できるブラックフライデーは毎年、ある種「お祭り」気分でショッピングを楽しむ人たちで賑わいます。

今年は歴史的なインフレがクリスマス商戦に影響を及ぼすことが懸念されていましたが、ふたを開けてみると感謝祭当日に昨年比2.9%増となる52億9000万ドルの売り上げを記録し、ブラックフライデーのオンラインセールは史上最高額となる91億2000万ドルを突破したことが分かりました。CNNによると、今年のブラックフライデーのオンラインでの売り上げは、昨年比で2.3%増となり、特におもちゃや電子機器、運動器具やスマートホーム機器の伸びが顕著だったそうです。

ブラックフライデーにオンラインセールの新記録樹立を伝えるCNNニュースの記事
ブラックフライデーにオンラインセールの新記録樹立を伝えるCNNニュースの記事

史上最高額を記録したのは、インフレによる販売価格の高騰も影響してはいるものの、今年は例年に比べて全般的に割引率が高く、平均でおもちゃが34%、コンピューターやテレビなど電子機器が25%、アパレルが18%オフになるなどお得感があり、人々の購買欲が衰えることはなかったようです。

オンラインショッピングは、サイバーマンデーまで好調を維持し、感謝祭当日を含めた5日で350億ドルの売り上げを記録したとNBCニュースは伝えています。サイバーマンデーは、昨年比5.3%増の113億ドルの史上最高売り上げを記録し、インフレ下でもクレジットカードやローンなど後払いを利用して買い物をする人が多かったと伝えられています。

一方で、実店舗の客足は伸び悩み、例年なら大混雑する大型量販店やショッピングセンター、アウトレットで人が少ないことが報じられています。

人が少ないショッピングモール
人が少ないショッピングモール

コロナ禍前は目玉商品を求めて数日前から家電量販店の前にテントを張って並ぶ人たちの姿が見られたものですが、今では徹夜で並ぶ光景は珍しくなっており、日付が変わると同時に大勢の買い物客が店になだれ込み、駐車場では争奪戦が繰り広げられ、真夜中から明け方まで買い物しまくるブラックフライデーの風物詩もひと昔前のものとなりつつあり、今年は人がいない店舗やガラガラの駐車場が各地で見られたそうです。商品の奪い合いでけが人が出たなんて時代はもう終わり、ブラックフライデーものんびり自宅でコンピューター画面を見ながらクリックひとつで買い物する時代へと変化しているようです。

この連休で当初の予想を遥かに上回る1億9670万人が買い物をしたとのデータもありますが、全体としてはインフレ率が9%なのに対し、割引率は5%に留まっていることから、人々の財布のひもが固くなっているのは変わらないと言われています。ブラックフライデーにノートパソコンを買いに出かけた知人は、値段の安い商品からどんどん売れていたと話しており、同じセール品であっても価格が高い商品は売れ残っている傾向があったと言います。

筆者が訪れたアウトレットでは、すでに割引された値札からさらにブラックフライデーセールで30%や50%、中には正規価格から80%オフなんて商品もあり、売れ残った商品をいかに売り切るか店側も必死な感じがしました。消費者にとっても、より割引率が高い商品を探すのはもちろん、今年はいかに安くホリデーの買い物ができるかがテーマになっているようです。

記録的なホリデーショッピングセールがあったにも関わらず、11月の個人消費は全体では落ち込んでおり、このホリデーセールで借金を抱える人が増えれば、今後さらに景気後退が進むことも懸念されます。

依然としてインフレによる物価や家賃の高騰、ガソリン価格の上昇は続いているほか、IT業界におけるリストラの嵐などもあり、これからクリスマスまで続くホリデーショッピングにも影響が及びそうです。(ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)