時刻表の路線図を眺めると「何これ?」と思ってしまう山万ユーカリが丘線は利用者に寄り添う路線だ。東京との利便性を考慮して始発は早く終電も遅い。住宅街は、すべての家が駅から徒歩10分以内で行けるように考慮され、今どき珍しい「天然環境車」が周回しているが、それに伴うサービスもある。さらには絶景と懐かしさというポイントも加わっている。
のっけから、おわびめいたものになってしまうが、現地訪問は6月30日で、それには十分な理由があった。ユーカリが丘線は3編成の車両が走るが、すべて天然環境車である。平たく言うと冷房がないのだ。首都圏では、なかなか珍しい。ユーカリが丘線では開業時の1982年から83年にかけて製造された車両が使用されている。ちょうど日本中の車両に冷房装置が広がり始めたころでギリギリ間に合わなかった。82年といえば私も東京で大学生活を送っていたころなのでエアコンのない車両があるのはよく分かる。もちろん車両は、その後改良が加えられているが、専用軌道を走る特殊な形態だけに重量の問題など後付けの冷房装着は難しいようだ。(写真1)
で、乗車日に話は戻るが、私のユーカリが丘線体験は今回が2回目。1回目は10月のことで冷房の必要がない季節だった。暑い日に乗車して、ぜひとも天然環境を体験したいと千葉に向かったのが6月30日だったのだ。6月末といえば、すでに相当暑いはず。その体験を盛夏に記事にしようと考えていたら、どういうことか当日は曇りで、あまり暑くなかった。さらにその後、首都圏で急速に新型コロナウイルスの感染拡大があり、記事化も現在に至ってしまった次第。
ユーカリが丘線では例年「おしぼり電車」を運行している。車内でおしぼりとうちわを設置、配布するもので今年は7~9月に行われたようである。盛夏の乗客サービスも、しっかりそしてほのぼのと行われているということを、きちんと強調しておきたい。
路線に戻ろう。女子大駅はラケットのフェイス状の運行で最初の駅。名前の通り女子大があるのか、と思いきや、存在するのは大学のセミナーハウス。もともとは大学そのものに移転計画があったため先に駅名が付けられた。この駅は景観に注目だ。ホームに立つと駅舎の逆側に住宅はなく農地などが広がっており、そのため遠くの高層マンションがくっきり見え、接近してくる車両も遠くからじっくり見ることができる。これは素晴らしい眺望である。(写真2~5)
中学校駅は文字通り、降りてすぐのところに中学校がある。始終着のユーカリが丘を除くと路線内で最も利用者の多い駅である。井野駅は住宅と住宅の中をぬうように列車が近づいてくる構造。沿線で唯一、地名の名前が付く。ちなみに中学校駅の由来となったのは井野中学校。井野駅付近には井野小学校があるが、井野駅の所在地はユーカリが丘7丁目。井野小のかつての住所は井野だったが、現在はユーカリが丘に変更されている。(写真6~8)
ユーカリが丘線のダイヤは昼間は20分間隔の運行。朝夕の通勤通学時間はもちろん本数が増えるが、大きな特徴として始発の早さと終電の遅さがある。ユーカリが丘駅の始発は4時35分。約15分でグルリ回って戻ってくるが、4時台というのは、かなり早い。これは京成のユーカリが丘駅の京成上野行き始発4時54分に対応しているものだ。そして終電も24時7分発と日付変更線を超えていて東京との利便性が考慮されている。早朝から深夜までずっと車両の走行音があっては、井野駅のように住宅が近い場所は困るだろうと思われるかもしれないが、新交通システムなので全く問題ない。(写真9、10)
自動改札機にも注目してほしい。一見すると普通だが、よく見ると首都圏などで見慣れたものと少し違う。ICカードのタッチ部分がないのだ。ユーカリが丘線では、いわゆるIC乗車券は使用できない。定期券や回数券などを持っていないと現金が必要となる。その券売機もシンプル。運賃は均一200円(子ども半額)なので押す部分は2カ所のみ。「押す」と書いたが、タッチパネル式ではなくボタン式。投入のみの改札機とともに、ちょっとした懐かしさが漂う。(写真11~13)
懐かしいだけではない。現在「顔認証乗車システム」を実証実験中である。あらかじめ個人のデータを登録しておくと、改札の顔認証ポールに立つだけで非接触で入退場ができるというもの。このシステムが本格導入されれば、鉄道ではもちろん初めてとなる。
すべての住居まで駅から徒歩10分というニュータウンの鉄道は、懐かしさと最新鋭の技術そして何よりほのぼの感に包まれ、来年で誕生から40年である。【高木茂久】















