首都圏を襲った大雪の記憶がまだ生々しく残っているが、山梨・精進湖では意外にも24時間以内に除雪も完了し、自由に行き来できていた。ただ、とてつもなく寒い。毎朝、マイナス10度からスタートしている。同湖では岸際での部分結氷なのもあって、なかなかワカサギ釣りの客足も伸びない。ワカサギの活性はとてもいいらしい。そこで極寒の精進湖を取材してみた。

 想像以上に寒い。中央道を経由して大月から河口湖を目指す。一般道に降りて西に進路を取る。途中、気温デジタル表示看板があった。

 「マイナス10℃」

 見てはいけないものを見てしまった感覚。こんな氷点下の世界で人間は活動できるんだろうか? ハンドルを握りながらちょっとした恐怖におののいた。

 湖畔荘に到着した。時計は「5:26」。ちょっと早い。目をつぶって仮眠して、次に目を開けたときは「6:02」だった。店は明かりがともっていた。

 「この1週間、まともにお客さんが来てないねぇ。寒すぎるかもしれないねぇ」と湖畔荘の渡辺金尊店主がのんびりとした口調で話した。ワカサギの様子を尋ねると「魚はいるね。ワカサギの卵は同じ神奈川県の芦ノ湖から買いました。他の湖の評判がとてもいいので、漁協も初めて芦ノ湖産の卵を購入したようです。活性はとてもいい。底付近でスゴイ食う」と渡辺店主は目を丸くした。

 問題は、この寒さだ。ワカサギは氷上穴釣りをする地域で釣れる魚種なので、ちょっとやそっとの寒さで機嫌を悪くしない。むしろ、寒さが増すごとに動きが活発になる。ヒットしたときにサオを握った手に伝わってくるプルルンという感触は、楽しさを倍増させてくれる。

 この寒さに、人間と釣り道具が耐えてくれるかどうか。まずは、防寒をしっかりする。貼るタイプの簡易カイロを背中や腰に装着するとジワジワ内側から温かくなる。

 釣り道具もちゃんと選びたい。氷点下をナメてはいけない。タコボウズ記者は、サイズが6センチという小型もいるため、クロダイのダンゴ釣りで使う感度の良い細いサオを使った。さらにアタリが明確に分かるようにPEラインを選んだ。そこが失敗だった。

 細いサオは糸を通すガイドも小さい。PEラインは糸をよってつくった糸なので、水分を含んでしまう。氷点下の世界では、水は凍ってしまう。バケツに水を入れてしばらくすると、薄氷が水面を覆ってしまう。つまり、サオのガイドが氷でふさがり、PEラインには玉状の氷が張り付いた。

 結論から言えば、ガイドは大きいタイプ。多少凍っても道糸が詰まってしまわなければいい。

 で、ようやく27日の実釣にふれよう。あまりの寒さなので、10分だけ限定で湖上で釣りをしてみた。落としたらすぐにプルルン。仕掛けを落とすと反応する。これは釣れるわ。タコボウズ記者は6匹でやめてしまった。ただ、そのまま釣っていれば、100匹は超えていたかもしれない。

 精進湖、防寒さえしていれば、ワカサギでかなりウハウハなシーズンを送れる。極寒の精進湖、覚えていたら、足を運んでほしい。【寺沢卓】