東京湾のマダコが熱い。千葉・内房の富津「みや川丸」(宮川淳船長=58)では4月28日の解禁初日に4・2キロの大ダコが飛び出して以来、コンスタントにキロ級が乗っている。岩礁地帯の底をはう獲物を石ガニで誘う手釣りで、重さがダイレクトに伝わり、面白い。

 タコは空に揚げるだけではない。海の底からも揚がってくる。第二海堡(かいほ)~富津南沖の10~15メートル。起伏のある岩場に獲物はいた。「タコの好物のカニが底で追われているよう演出します。一定間隔でタコテンヤを小突いて誘ってください」。宮川船長が出船前講習でこうアドバイスした。

 朝一番から、獲物はポツポツ乗ってきた。左舷トモ(最後方)で、千葉県袖ケ浦市から初釣戦した山田義明さん(68)はこの日最多の6匹を乗せた。「モゾモゾとカニに触れたかのようなサワリの後、モタっとしたアタリが来た」と言う。その友人で左舷後方2番目の飯塚正一さん(67)は、開始早々に1・2キロを確保した。「重いから最初は根掛かりかと思った。思い切りアワせたら乗っていた」と振り返る。

 手釣りといっても、イナダのカッタクリのように大きく誘い上げる必要はない。渋糸を親指と人さし指でつまんで手首を軽く上下させて誘う。手のひらを返して人さし指の第1関節に渋糸を乗せ、指を曲げ伸ばしして誘う人もいた。「中には着底していると思って誘っているつもりでも、テンヤが底から浮いている人もいる。根掛かりを恐れないで底で誘って」(宮川船長)。根がきついところで出る可能性が高いからだ。

 右舷胴の間で完封負け寸前だった記者には、沖上がり15分前にチャンスが来た。テンヤが着底して2~3回小突くと、カニに覆いかぶさったかのような重みが伝わった。大きくアワせ、獲物がバレないよう渋糸を一定のペースで引き上げる。1・5キロが乗っていた。「あきらめずに小突くのがコツですよ」。飯塚さんの言葉通りだった。

 数や型は例年並み。現在、底に控えている300~500グラムの小ダコがだんだんデカくなり、最盛期の夏にキロ級へと成長する。シーズンは8月末から9月上旬まで。暑くなるとともに、東京湾の底で熱くなる。【赤塚辰浩】

 ▼船 富津「みや川丸」【電話】0439・87・4137。受付5時、沖上がり12時。レンタルのテンヤ&渋糸、持ち帰り用ネット、氷、レシピ付き9000円。