今月1日、南伊豆地区の船釣りのマダイ大会が実施された。手石「米丸」を本部にして、須崎「静栄丸」との合同大会で17人が覇を競った。大会前日の6月30日には米丸参加者が石廊崎沖で6・5キロを釣り上げていたこともあって、鼻息は荒かったのだが…確かにマダイはいる。静栄丸に乗り2・63キロを仕留めた幡谷(はたや)忠克さん(77=大磯町)が初優勝を飾った。

 列島に大きな爪痕を残した台風7号が来る前の今月1日だった。視界が濃霧でさえぎられ、ほのかに東の空に太陽らしき丸い発光体が確認できた。波もなく、風もなく、静けさだけが石廊崎沖を支配していた。午前6時をちょっと回って、競技スタート。マダイ1匹の重量勝負だ。

 ハリスは12メートル前後。釣れるマダイが大きいこともあって、4号以上の太さを使う釣り人が多い。大会前日の6月30日には、米丸に乗船した古川愛さん(44=八潮市)が6・5キロの大物を釣り上げていた。「サオをシャクって、船長に指示されたタナ(魚の泳層)に合わせたら、糸がすーって出て、50メートルぐらい出ました。巻いてもまた走っての繰り返しで、腕がパンパンになりました」と古川さんはニコリ。もちろん、この情報は参加者全員の耳に入っていて、船上は熱気に包まれていた。

 ただ、マダイの気持ちは洋上に広がった白い霧のようにモヤモヤしていたようだ。反応はあるものの、口を使わない。両船スタートから2時間ほど、強烈なアタリはあるものの、ブチンとハリスが切れてしまう。手石「米丸」肥田定佳船長は「ん~、イサキかなんかが食って、もしくは小型のマダイが掛かるけど、サメみたいなヤツにやられたかもね。大きいマダイもいるんだけどね」と唇をかんだ。

 大会を制したのは静栄丸に乗船した幡谷さんで、大会と名のつくイベントでは初めての優勝だった。「マダイを始めて40年ぐらいになるけど、こういう場で一番になるなんて…いいもんですね」と感慨深げにつぶやいた。

 競技スタートから幡谷さんはハリス3号で攻めたが、ハリスごとブチリと切られて、迷わずに4号にチェンジした。長さも短めの10メートルにして構えた。その代わりにちょっとタナを上げて、リールのドラグを緩め、指で少しずつ道糸を伸ばしていった。ふわり、ふわりとゆっくりエサのオキアミが落ちていく演出だ。マダイバリは比較的小さい7号。マダイの警戒心を刺激しないように工夫した。その誘いが功を奏して優勝魚を釣り上げることができた。

 今後、石廊崎沖では、乗っ込みから回復する大きなマダイが釣れるが、なかなかに難しくなってくる。イサキ狙いでサオが引き込まれて、思いもよらぬ大ダイが釣れる…なんてことがよくある。何が潜むか分からない南伊豆、強い引き味に身を任せてみませんか? ギラギラと照り付ける太陽の下、おっきいマダイとのバトルを経験できるかもしれませんよ。【寺沢卓】

 ▼問い合わせ 夏の潮は気まぐれなので、釣りものは各宿で確認してください。手石「米丸」【電話】0558・65・1060。マダイやイサキをターゲットにするコマセ五目や利島沖の大型メダイ、良型スルメイカを狙う。須崎「静栄丸」【電話】0558・22・5223。1年を通して釣れるイサキ、希望出船の高級魚キンメダイなど何でも相談してください。

 ◆成績(マダイ1匹の重量)<1>静栄丸・幡谷 2・63キロ<2>静栄丸・内田弘則(64=横須賀市) 1・46キロ<3>静栄丸・宮崎章夫(63=秦野市)1・45キロ<4>米丸・相川末雄(70=大田区) 400グラム<5>米丸・斎藤雅司(66=飯能市) 300グラム(米丸9人・静栄丸8人、敬称略)