静岡・興津川で日刊スポーツ共栄会あこがれ亭(柿澤健太郎店主=50)の2023年興津川「あこがれ亭」アユ釣り大会(日刊スポーツ新聞社主催)が9月24日、開催された。予選には51人が参加。決勝にはシード選手などを含む計18人が進出した。オトリ2匹含む計7匹374グラムで、「チームあこがれ」の木下敦さん(68)が優勝を飾った。

同大会はコロナの影響から2019年を最後に、開催が見送られてきた。3年ぶりの開催を予定した昨年は、大会前日に台風15号の直撃を受け中止。この被害により、「川相が全く変わってしまった」と柿澤店主。“興津川は釣れない”。そんなうわさが全国的に広がる中、大会開催を待ちわびた51人が集まった。中には「大会を開催してもらうことが、興津川アユ復興の第1歩ですから」と話す人もいた。

木下さんもその1人だった。予選の入川順は、くじ引きの結果43位。順番が遅いことから「最上流か最下流に行くしかなかった」というが、最上流部の矢崎橋下を選んだ。そこは「決していいとは言えない状況。群れアユ狙いだったけど魚影が薄かった」。

予選は全体でも厳しい状況となり、トップで8匹。木下さんは3匹を掛けた5匹で、ギリギリの予選通過。決勝の入川順は最後となった。

決勝は2時間。汗だくで戻った木下さんの第一声は「疲れたよ。もうふらふら…」。まさに息も絶え絶え。それもそのはず。決勝の舞台として選んだのは、最下流部となる宮淵だった。だが、引き舟の水を切り、網にアユを出すと、そこには7匹が姿を見せた。検量を見守る参加者たちから「お~っ」という感嘆の声が上がった。

同大会の前身で優勝経験があり、通算で2勝目。「まだ(福島県の)伊南川で開催していたころだから、もう何年も前過ぎて忘れた」と苦笑しながらも、「チームでもなかなか勝てていなかったから、やっと勝ててうれしい。でも、さすがに疲れたよ」。喜びで疲れは吹き飛ばなかった。

「チームあこがれ」のメンバーは同大会の下見釣行を禁止している。その理由は「僕らはホームなので、遠方から来てくれる方々に釣って欲しいんです。おもてなしの精神で、これこそ日本のかがみだと思っています」と胸を張った。

それでも、戦う以上は優勝を目指した。「下流域に向かった人の方が予選通過者が多いという話を聞いた」。入川が最後だったこともあり、賭けに出た。そして勝った。予選の最上流部から決勝の最下流部まで約4キロ。文字通り、足で稼いだ優勝となった。【川田和博】

○予選7匹、決勝6匹396グラムで準優勝の友田輝信さん(53) 「決勝はとっくりの下あたりで群れアユを狙った。群れはいたけど、思ったようにはいかなかった。前回も決勝6匹で14位だったけど今回は準優勝。ちょっと複雑ですが…」。

○前回準優勝でシード権を獲得していた兵藤雅人さん(33)は5匹234グラムで3位 「トップで川に入れるということで、上流の仮橋付近を狙った。先週1時間で7匹釣れたのでここにしたけど、アカが飛んで状況が変わっていた。優勝を狙っていたので残念です」。

◆競技委員長・中村さん総評

同大会の競技委員長は「チームあこがれ」副会長の中村義則さん(45)が務めた。川の状況について「去年の台風の影響で川が壊れてしまい、いい状況ではなかったですね」という。また、大会当日は「数日前の雨でアカが飛んでしまい流心には付いていない状態で、砂も多かった。決していい状態とは言えないし、結果的にも渋かったと言わざるを得ない」としたが、「今年は大会を開催することに意味があると思っています。これが興津川アユ復興の第1歩になると信じています」。

◆競技方法

▼エリア=山びこ橋~高瀬間の約4キロ▼予選=3時間でオトリ2匹を含む匹数。入川順は受付時にくじ引き。11人目タイの順位が決勝進出▼決勝=2時間でオトリ2匹を含む匹数(同数の場合は重量優先)。入川順は19年シード選手→予選順位(同順位は予選の入川順優先)。

<復興の一助に>

昨年の台風15号の被害は甚大だった。1年が経過した今でも道路には重機があり、片側通行となっている場所も残っている。興津川も堆積物除去などのため、重機で川底をさらった。もちろん、生活面の復興が最優先だが、これによってアユ釣りは大ダメージを受けた。「以前の興津川に戻るには、5年はかかるかもしれない」という釣り関係者もいるほどだ。記者は、釣り人ができる復興の一助は、興津川でアユ釣りをすることだと考える。そう信じて、今大会も開催した。興津川が少しでも早く回復することを心から願う。

▼興津川「あこがれ亭」【電話】054・393・3814。日券1500円、現場売り2500円、年券7000円。オトリ1匹600円。宿泊も可能。※詳細は電話でお問い合わせを。