クロダイのかかり釣りをご存じだろうか? 「知らない」「知ってはいるけど…」「やってみたけど難しくて」という人が多いかもしれない。記者も約5年前、当時の釣り記者に同行し釣ることはできたのだが、ダンゴをうまく扱えず、宿題を残したままだった。それを思い出し、連日好釣果の報告が届く静岡・清水「原金つり船」(吉原浩二船主=59)へと向かった。

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かかり釣りは一見シンプル。仕掛けはサオとリール、ラインはフロロカーボンの通し。そこに針を結び、必要に応じてガン玉を打つ。針に餌を付け、ダンゴに包む。それを海底まで落とし、しばらくすると割れて、針に付いた餌が現れる。「今度はちゃんとダンゴの中に針を入れ込んで釣ります」。当時の記事はそう締められていた。

船長の操舵(そうだ)する親船で釣り客が乗る和船をひき、各ポイントに掛けていくことから「かかり釣り」と言われる。今回のポイントは貯木場。水深約5メートルと浅く穏やかな場所だ。

今回、同港をホームグラウンドにするマルキユーフィールドテスターでクロダイ釣りクラブ「清潮会」鈴木孝久会長(56)に同行してもらった。鈴木会長はいつも通りのダンゴを使用。清水港ではおからをベースに「箱餌」と呼ばれる粉餌や数種の集魚剤などを合わせ海水で混ぜたものだが、この「配合」と「水分量」が初心者には難しい。水分量が少ないとダンゴが途中で割れ、底まで落とせないこともある。

その問題を解決してくれるのがマルキユー「ウエットダンゴチヌ」だ。箱を開けたら握るだけ。今回記者はそこに「荒びきさなぎ」を加えたが、海水を足さなくても大丈夫だった。宿題はこれで解決…。

開始程なくして鈴木さんのサオが弧を描く。上がったのは35センチの良型。「付け餌はコーン。ダンゴに包まず、別に落としたら食ってきた」。記者も同様にすると手のりサイズが釣れた。昼食休憩後は入れ食いとなり、型も伸ばせた。約6時間で鈴木会長は最大42センチ計16匹、記者は最大36センチ計7匹を上げ、早上がりとした。

刻々と変化する状況に応じ、付け餌のローテーションやダンゴの打ち方などを変え、その時々に合った答えを探していくのが、この釣りの魅力の1つ。難しいがゆえに答えが合った時のうれしさも大きい。また、清水港のかかり釣りは「大名釣り」とも呼ばれる。その名残から和船にはタモ、イケス、ゴミ箱が完備。雨よけのテントやゴザもあり、朝の注文が必要だが、アツアツの出前も届けてくれる。

海中の季節も移ろい数釣りの秋。「例年通りであれば年内は数釣りを楽しめる」と吉原船主。本命はもちろんゲストのボラやアジ、ヒイラギなど常にアタリがあるので、かかり釣りを始めるには絶好の時季。「かかり釣りをやってみたい」。そう思ったら吉原船主にご相談を。いろいろとアドバイスしてくれるはず!【渡辺久美子】

■競技会も開催

競技会も盛んに行われ、「第36回JFT(全日本釣り技術振興評議会)コムテックカップ全日本かかりチヌ(クロダイ)王座決定戦」が9月25~26日、同港で開催。全国から選ばれた8人の総当たり戦で争われ、鈴木貴浩選手が3回目の出場で初優勝を飾った。準優勝は兼松伸行選手(大阪日刊釣りペンクラブ)、3位は森圭一郎選手。3人ともかかり釣りの面白さを「魚を探すのではなく、寄せて自分でポイントを作って釣ること」と答えた。

▼清水「原金つり船」【電話】054・352・3065。出船午前6時。平日、土日祝日、人数で料金が異なるため、詳細はお問い合わせを。駐車場代550円。