医師で作家の鎌田實さん(67)が、日常生活のちょっとした工夫で健康になり、10歳若返るヒントを教えてくれます。

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 野菜摂取量が全国一である長野県は、平均寿命日本一。がんによる都道府県別年齢調整死亡率も、長野県が日本一少ない。しかも、圧倒的に少ない。野菜摂取量が日本一高いことが、がんを減らしていることに大きく貢献していると思う。

 2位の島根県は、心筋梗塞が日本一少ない。心筋梗塞は、心臓の冠動脈が動脈硬化で詰まる病気だ。

 野菜の何がいいのだろうか。答えは、緑や黄色、赤など色素が持つ「抗酸化」というパワーだ。

 ぼくたちの細胞は日々、老化している。正常な細胞が傷ついて、がん化しかかることもある。原因は、フリーラジカルという物質であることがわかってきた。たばこや一部の農薬、添加物、紫外線などはその代表例だが、なかでも、毒性が強いのが活性酸素だ。

 活性酸素は、細胞を傷つけて動脈硬化や心筋梗塞などの生活習慣病を起こしたり、DNAを傷つけ、がんを発生させる。

 この活性酸素を抑える力=抗酸化力という。この力をもつのが、色素である。ニンジンやブロッコリー、カボチャなどに含まれる黄色や緑色のβカロテン。さらにその2倍の抗酸化力をもつ、トマトに含まれる赤い色素のリコピン。これらは、健康にとって強い味方だ。

 ちなみに、サケなどの魚が持つ、赤い色素アスタキサンチンも抗酸化力がある。

 βカロテンもリコピンも、油に溶けやすい。熱にも壊れにくい。効率よく吸収するには、生のまま食べるよりも、油と一緒にとったほうがはるかにいい。

 野菜の抗酸化力を期待するなら、野菜炒めや、トマトスープなどがオススメである。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日、東京生まれ。東京医科歯科大医学部卒業後、長野県茅野市にある諏訪中央病院の医師になる(現在は名誉院長)。チェルノブイリ原発事故の患者支援、イラク難民支援を続け、東日本大震災後の被災地支援にも力を入れている。著書「がんばらない」など多数。