医師で作家の鎌田實さん(67)が、日常生活のちょっとした工夫で健康になり、10歳若返るヒントを教えてくれます。

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 野菜を日本一食べるようになった長野県では、脳卒中が減った。同時にがんの死亡率も減った。野菜の抗酸化力が血管を若々しくするだけではなく、細胞の老化を防ぎ、がん化も防ぐことができるようになったと考えられている。

 野菜をたくさん食べると、脳卒中が減り、心筋梗塞も減り、がんも減るということだ。

 これは地域を健康にするうえで大切な柱なのだが、最近は、被災地支援でも重要であることを実感している。

 東日本大震災の後、真っ先に福島県に入った。チェルノブイリの放射能汚染地帯に100回以上の医師団を送って支援してきた経験を生かしたかった。

 福島県では、震災と津波、原発事故で、つらい状況が続いている。5年たった今も、県内外に避難している人が10万人近くいる。

 特に見えない放射線に対するストレスは多い。ストレスが多ければ血管は縮む。そして、血管の詰まる病気は当然多くなる。福島県は、心筋梗塞が日本一多いのである。

 避難生活のストレスに加えて、放射線を心配して、野菜の摂取量が少なくなっている可能性があるのではないかと思っている。

 福島の野菜はほとんど測定限界以下で放射性物質の検出はゼロに近い。だが、もっと「見える化」を徹底し、安心して野菜をたくさん食べてほしい。

 今もぼくは福島に通い続け、仮設住宅暮らしを続ける人たちに「野菜をもっと食べよう」と話している。

 そして、福島県だけではなく、日本中がもっと野菜をたくさん食べるようになれば、がんも心筋梗塞も減って、健康長寿ニッポンになる。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日、東京生まれ。東京医科歯科大医学部卒業後、長野県茅野市にある諏訪中央病院の医師になる(現在は名誉院長)。チェルノブイリ原発事故の患者支援、イラク難民支援を続け、東日本大震災後の被災地支援にも力を入れている。著書「がんばらない」など多数。