医師で作家の鎌田實さん(67)が、日常生活のちょっとした工夫で健康になり、10歳若返るヒントを教えてくれます。

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 オキシトシンというホルモンがある。このホルモンは、女性が子どもを産み、授乳をしているときに多く分泌されることがわかっている。

 オキシトシンは、相手に親しみを感じ、愛着をもたせるので、別名愛情ホルモンなどという。生きる力になったり、感染を予防する作用もあるといわれる。

 子どもがインフルエンザになると、母親はつきっきりで看病する。それでも感染しないことが多い。ところが、父親は会社から帰宅し、子ども部屋をのぞいて「がんばれよ」と声をかけただけで感染してしまったりする。母親と父親の違いは、オキシトシンの分泌量ではないかといわれている。

 オキシトシンは、出産・子育てにかかわる女性だけでない。子育てをしていない中高年の女性や、男性でも分泌される。

 オキシトシンが出やすいのは、好きな人とハグしたり、肌と肌を触れ合ったりするとき。また、犬や猫などペットをかわいがっているときも、出やすい。

 高齢者のデイケアなどでも、ペットや子どもと触れ合うと、高齢者が生き生きとしはじめる。

 オキシトシンがすごいのは直接、触れ合わなくても、相手を幸せにしようと考えるだけでも分泌されること。つまり、相手を幸せにしようと考えると、自分も幸せ感を得るような仕組みが体に備わっているということだ。

 ビジネスの世界にも、もっと他者の幸せを考える「オキシトシン主義」を取り入れてはどうか。そうすることで、社会はもっと生きやすく、元気になると思うのだが。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日、東京生まれ。東京医科歯科大医学部卒業後、長野県茅野市にある諏訪中央病院の医師になる(現在は名誉院長)。チェルノブイリ原発事故の患者支援、イラク難民支援を続け、東日本大震災後の被災地支援にも力を入れている。著書「がんばらない」など多数。