医師で作家の鎌田實さん(67)が、日常生活のちょっとした工夫で健康になり、10歳若返るヒントを教えてくれます。

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 歌手のマドンナもやっているマクロビオティックという食事法がある。2014年に亡くなった久司道夫さんが世界に広めた食事法である。肉や加工食品、砂糖、乳製品などを避けるというものだ。

 ぼくは久司さんと対談したことがある。マクロビにはいい面も多いが、とことんやらずに、プチマクロとかちょいマクロくらいがちょうどいいと思った。

 なぜなら、肉や乳製品をとらないマクロビは、ビタミンB12や各種のアミノ酸、ビタミンD、カルシウムが不足して活力が下がったり、骨が弱くなったりする。1つの食事法にハマりすぎや、がんばりすぎには要注意だ。

 健康長寿にとって、野菜をたくさん食べることはとても大切だ。長野県は野菜摂取日本一になったことが、長寿日本一になったことに大きく貢献しているとぼくは考えている。だから、野菜中心主義はいいことだ。

 でも、肉や魚をまったく食べないベジタリアンになってしまうと、長生きはできない。粗食がいいわけではない。大正時代の平均寿命は43歳。大正時代のような粗食にしていいわけがない。ベジタリアンの宮沢賢治は37歳で死亡した。彼がまじめ過ぎるベジタリアンでなければ、すばらしい作品をもっとたくさん残したと思う。

 ぼくは、ほどほどのベジタリアンくらいがちょうどいいと思っている。野菜中心主義だと言いながら、焼き肉に誘われるとホイホイついて行き、カルビ3人前も食べてしまう。だらしのないベジタリアンだ。

 だが、こういう人が長生きすると思う。基本は野菜中心で、ときどき肉や魚も食べて、食を楽しむ。だらしのないベジタリアンや、ちょいマクロビがおすすめである。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日、東京生まれ。東京医科歯科大医学部卒業後、長野県茅野市にある諏訪中央病院の医師になる(現在は名誉院長)。チェルノブイリ原発事故の患者支援、イラク難民支援を続け、東日本大震災後の被災地支援にも力を入れている。著書「がんばらない」など多数。