医師で作家の鎌田實さん(67)が、日常生活のちょっとした工夫で健康になり、10歳若返るヒントを教えてくれます。

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 国民皆保険制度は日本の宝だ。いつでもだれでも、一定水準の医療を、2~3割の負担で受けることができる。ありがたい制度だ。

 しかし、新薬開発が日進月歩のなかで、承認に時間がかかるドラッグラグや、新薬の高額化が大きな問題になっている。

 名古屋の2歳の白血病の女の子ゆめちゃんは、日本では未承認のキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法(CAR-T細胞療法)を受けるために渡米を計画。アメリカの医療施設から1億円を超える前金を要求された。募金活動も行われたが、ゆめちゃんは渡米することなく亡くなった。

 名古屋大学医学部小児科の小島勢二教授は、大学を退官後の5月、「名古屋小児がん基金」を設立。小児がんの治療開発や副作用の予防・軽減療法の開発、アジアの発展途上国の患者サポートなどを行っていく。

 小島氏は、米国の医療施設が1億円超の前金を要求したCAR-T細胞療法を、約60万円でできるという。実現すれば、ゆめちゃんのような子どもを救える可能性が高くなる。ぼくが支援を続けている貧しいイラクの白血病の子どもにとっても朗報だ。

 新薬の高額化は、医療保険制度を壊しかねない。たとえば、肺がんの新しいタイプの治療薬オプジーボは、肺がんへの適応を認可されたが、平均的な体格の男性で年間約3500万円かかる。肺がん患者は約5万人。高額療養費制度を利用しても、患者負担は少なくないし、国の医療費は膨れ上がるばかりだ。

 医療は、多くの人が平等に受けられるものであるべき。日本の宝である医療保険制度を守っていくためにも、問題点についても知っておいてもらいたい。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日、東京生まれ。東京医科歯科大医学部卒業後、長野県茅野市にある諏訪中央病院の医師になる(現在は名誉院長)。チェルノブイリ原発事故の患者支援、イラク難民支援を続け、東日本大震災後の被災地支援にも力を入れている。著書「がんばらない」など多数。