肺がん治療30年のスペシャリスト、国立がん研究センター中央病院の大江裕一郎先生(57)が、最新の肺がん治療を教えてくれます。

【肺がんの種類と特徴】    

 肺がんには大きく分類して、腺がん、扁平(へんぺい)上皮がん、小細胞がん、大細胞がんの4つの種類があります。それ以外にもさまざまなまれな種類の肺がんが数%存在します。

 肺がんはその特徴および治療選択の違いにより小細胞肺がんとそれ以外の腺がん、扁平上皮がんなどの非小細胞肺がんに分類されます。たばこの影響を受けやすいのは、小細胞肺がんと扁平上皮がんです。小細胞肺がんと扁平上皮がんは肺の中心部にできやすく、腺がんは肺の末梢(まっしょう)にできやすいと言われています。

 小細胞肺がんは他の肺がんと比較すると、進行が速く転移をしやすいという特徴があります。そのかわり、抗がん剤や放射線治療が非常に効果的です。そのために、小細胞肺がんの場合は、極早期の患者さんを除いて手術はせずに、抗がん剤治療や抗がん剤治療と放射線治療の併用が行われます。早期の小細胞肺がんで手術をした場合でも、その後に抗がん剤治療を追加する必要があります

 小細胞肺がん以外の肺がんでは、手術ができる場合には手術をするのが治療の第1選択となります。病気の進行度によっては、手術後に抗がん剤治療が追加されます。

 腺がんでは、EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子などの遺伝子異常が、原因の場合も少なくありません。これらの遺伝子異常のある患者さんでは、それぞれEGFR阻害薬、ALK阻害薬が非常によく奏功します。

 一口に肺がんと言っても多くの種類があり、種類、進行度により最適な治療法は全く異なります。担当医とよく相談して、自分に最適な治療法を選ぶことが非常に重要です。

 ◆大江裕一郎(おおえ・ゆういちろう)1959年(昭34)12月28日生まれ、東京都出身。57歳。東京慈恵会医科大学卒。89年から国立がんセンター病院に勤務。2014年、国立がん研究センター中央病院副院長・呼吸器内科長に就任。柔道6段。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本体育協会公認スポーツドクターでもある。