梅毒は1980年以降、世界各地で感染者の増加が指摘されている。世界保健機関(WHO)は2012年に1770万人に達したと推測した。東京・西新宿の「プライベートケアクリニック東京」名誉院長、尾上泰彦医師はこう話す。

 「中国衛生部によれば、13年の中国内の感染者数は40万6772人。15年前の10倍です。同国のある地方のストリートガール(売春婦)を対象にした調査では、梅毒の感染を示す血清陽性率が、全体で43・5%にも上っています」

 中国からは昨年、過去最高の637万3000人の旅行客を記録した。「爆買い」が例えば、日本の風俗業界に影響を及ぼしている可能性がある。

 「日本人の性行動が急に変わることは考えられません。それなのに、都市部に患者が集中し、異性間感染も増えています。そして、若い女性に梅毒が増えているのはなぜでしょうか。感染力の強い梅毒には、国境はありません。とはいえ、とてもプライベートな問題なので、本当の原因は分かりません」(尾上医師)。 国内における梅毒の感染経路は、1739例(15年)の99%が「性的接触」。「同性間」が584例(全体の34%)、「異性間」が839例(同49%)。08年以降、男性では同性間の性的接触が多かったが、15年に「異性間」が上回った。女性は14年から一貫して「異性間」感染が増えている。

 「男性で異性間が同性間を上回ったのは、11年以降5年ぶり。女性では同性間の感染が、あまりありません。現在は、男女間の普通のセックスで感染するということです」(尾上医師)。

 若い女性患者の増加で、胎児感染による子どもへの感染が懸念されている。重い障害などを残す「先天梅毒」の危険があるのだ。先天梅毒は、10年は1例だったが、16年は14例に増えた。