梅毒にかかるとどうなるか。東京・西新宿の「プライベートケアクリニック東京」名誉院長、尾上泰彦医師はこう説明する。「梅毒は、病原体である梅毒トレポネーマが性行為によって感染します。梅毒トレポネーマは、皮膚や粘膜の小さな傷から侵入し、血液にのって全身に広がります」。

 梅毒トレポネーマは直径0・1~0・2マイクロメートル、長さは6~20マイクロメートルという細菌。“回転する糸”を意味し、屈曲運動が活発で温度変化に弱い。「39度で5時間、4度で24時間以内に死滅します。また30~33時間で増殖します」(尾上医師)。

 症状は時間を追って第1~4期の4つの病期に分けられる。初めの3週間は症状のない、いわゆる潜伏期。それを過ぎるとトレポネーマが直接侵入した局所に数ミリから約数センチのデキモノができる。「このふくらみを初期硬結(こうけつ)といいます。固く、見た目にも痛そうですが、じつは痛みもかゆみもないというのが特徴なんです」(尾上医師)。

 男性では「冠状溝」という、亀頭と包皮のくびれの根元あたり、包皮、亀頭にできやすい。女性では大あるいは小陰唇、子宮頸部(けいぶ)などにできる。唇、手指にもできることがあるが、数は少ない。通常は1個。複数のこともある。3~4週間では、血液検査をしてもまだ感染したかは分からない。再検査が必要となる。

 「この初期硬結の段階から直ちに治療を始められれば、患者さんには梅毒にかかった履歴が残らないで済むことが多いのです。それをできるのが専門医」と尾上医師。患者の側も「異変」を見逃さないようにしたい。