昨年11月、WHO(世界保健機関)がHIV(エイズウイルス)の自己検査を推奨し注目された。HIV感染者の4割以上は感染についての自覚がなく、効果的な治療を受ける機会がないという。

 性感染症に詳しい「しらかば診療所」(東京都)の井戸田一朗院長はこう話す。「近年は、WHOがHIVの“自己検査”の活用に言及していることがトピックとなっています。HIVの自己検査とは、検査を受ける人が自分の血液や唾液を採取して自分で検査を行い、その結果を判断するというもので、患者さんが自身で結果を受け取り、治療のきっかけにつなげることです」。

 声明の中でWHOは、自己検査が男性、若者、保健医療従事者、妊婦とその男性パートナー、カップル、一般層ら多くの人にとって有力かつ控えめで非常に受け入れやすい選択肢だとし、その検査結果で感染が疑われる人(陽性者)を絞り込むことで、再検査や必要な支援、サービスを提供でき、保健システムの有効性を高めることができると強調している。医療環境が整った先進諸国においてはこうした指摘に必ずしも同調できないところもあるが、性感染症対策という意味では日本でも共有すべきメッセージかもしれない。

 井戸田院長が続ける。「日々、医師は性感染症にかかること、医者にかかることが恥ずかしいという患者さんの気持ちを理解し寄り添って診療にあたっていますが、一方では性感染症にかかっていることを知らないまま感染をひろげてしまうということ、そして、性感染症は誰でもかかりうる病気だということを理解していただきたいですね」。

 知らないことこそ恥ずかしい!?