怒りの感情をコントロールするため、伸ばしたい能力に言語能力があります。言語能力が低い人は怒りの感情のコントロールが苦手です。

 怒りの感情は、以前、お話ししたように扁桃体(へんとうたい)で生まれます。理性をつかさどる前頭葉が扁桃体に介入してコントロールします。理性のたまものが言語です。大人と子どもを比べたとき、子どもの方が感情のコントロールが苦手なのは、言語能力が未発達なためです。

 怒りは、軽くイラッとするところから憤怒といったものすごく強い怒りまで幅が広い感情です。しかし、多くの人は「むかつく」「腹が立つ」などいくつかの表現しか使いません。本来は2つや3つの言葉で使い分けられるものではないのに、若い人たちは「うざい」「やばい」「キレる」の3語に集約してしまいます。

 ボキャブラリーが少ないと、うまく自分の感情を表現できません。3つしか言葉を持っていない人と10個持っている人では、10個持っている人の方がより正確に表現できます。言語能力が低い人は怒ると、大声を出します。言語表現で強弱をつけることができないため、ボリュームを上げることで強度を表現してしまいます。さらには手を出すことで怒りの強さを表そうとしてしまいます。

 言葉を増やす方法は2つです。ひとつは本を読んだり、映画を見たり、音楽を聴いて、引き出しを増やす。もうひとつは違うコミュニティーに入ることです。ひとつの業界に漬かると、周囲も同じ言葉を使っているため、ボキャブラリーは増えません。他業種でも他の世代でも地域でもいいと思います。言葉を広げ、多様な価値観を知ることができます。